1,671 / 2,831
DIY、広めに向かう
WITH仙王 その03
しおりを挟む当然ながら、『闘仙』は怠ける【仙王】を許しはしないようだ。
構えを取り、手抜きではあるが拳を当てようとし──
「っ……」
「ふっふっふ、ツクルがくれたこれのお陰だよ。あーっはっは、ローの攻撃など本気じゃない限り効かん! そして、本気でやったらここがどうなるか……分かっているよね」
──『ゲートコネクター』。
空間に穴を開け、そこから自由自在に収納した物を取り出すことができる能力。
応用として【仙王】は、そこに仙術の源である仙丹を大量に仕舞っていた。
それにより、いついかなる時でも高位の仙術を使えるようにしている。
だが、そんな仙丹を排出できる穴を開ける数は、これまで最高でも二つだった。
それもWITHシステムによって改善、無数の穴から得られる供給で仙術を発動。
もちろん、『闘仙』が本気を出せばいとも簡単に壊せるであろう防御の仙術。
しかし、天才は嫌らしく工夫を凝らし、周りに被害が及ぶレベルの強度にしていた。
「……『生者』」
「そう……ですね、少しばかりお手伝いをしましょうか」
「えー、ツクルもやるのー? 止めた方がいいんじゃないかなー? ほら、ツクルって弱いしー、これがあれば……二人だって同時に対処できるもんねー」
あー、『闘仙』の堪忍袋の緒が切れた音が聞こえたような……。
俺にできるのは【仙王】の攻撃ではなく、あくまでもこの場所の保持である。
「非殺傷結界展開──“星護結界”」
星鉱で創られた頭環によって、辺り一帯に構築される非殺傷結界。
これはコロシアムで用いられる代物で、内部における結果を無かったことにできる。
「この内部であれば、どれだけ暴れても影響が現実に作用することはありません。では、どうぞご自由に」
「……ということらしい。王、準備はもういいだろうか」
「………………ちょ、ちょっと待って! ズルい、ズルいよツクルに頼るなんて!! ほら、リーシー、アタシを助け──」
「リーシーさん。こちらで手を打っていただけないでしょうか?」
根回しはしっかりとしておく。
リーシーは【仙王】の従者だが、絶対に言うことを聞くわけではなく、あくまでも正しい方に従ってくれる。
そのうえで、賄賂を贈った方には天秤が傾きやすくなるのだ。
……というわけで、追加でプレゼントをすると快く【仙王】を無視してくれた。
「う、裏切り者ー!」
「お許しください、【仙王】様。これもすべては、貴女様のため……」
「嘘吐け! なら置け、その嬉しそうに抱き締めている人参を置けー!!」
「…………(プイッ)」
そんなこんなで、【仙王】の末路は今ここに定められる。
引き攣った笑みを浮かべ、抗いようのない運命に挑むのだった。
0
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる