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DIY、広めに向かう
WITH仙王 その02
しおりを挟む仙郷へ訪れたが、今回はWITHシステムの普及に努めよう。
そう考え、まずは【仙王】とその従者であるリーシーにインストールを促した。
「今戻った……が、なんだこの状況は」
「あっ、お帰り~。見ての通りだよ~」
「はぐっ、はぐっ……ふぁ、おふぁふぇりなふぁいふぁしぇ」
「……何が起こったのかは分からん。だが、誰の仕業かはよく分かるな」
「おや、こちらを睨まれましても何も出せませんよ」
ありのままを語るのであれば、空間に穴を開けてまったりしている【仙王】と、兎相手に人参の大食い勝負をしているリーシーが居るこの状況。
仙郷のある山の下部、迷宮を管理するかつての【仙王】の場所から帰ってきた『闘仙』が見たのは、そんな光景である。
「実はですね、『プログレス』の方で使ってもらいたいプログラムが出まして。それを今回、お二人に試していただいたのですが……大変気に入っていただけたようです」
「そのプログラムとやら、何か変化を生むのだろうか」
「個人差はありますが、リーシーさんのように擬似生命体が出現するタイプが分かりやすいですかね。意思疎通する相手が、自身の能力について適切なアドバイスやサポートをしてくれるようになります」
「……なるほど、それであの怠けっぷりか」
遠目に見る【仙王】は、次々と自身の能力で仕舞っていたであろうアイテムを取り出している。
本来、認識やらでかなり面倒なのだが……WITHシステムの補助もあってか、比較的スムーズに取り出していた。
「…………アレはアレで、いいサンプルにはなるんですけどね。元より空間系だった能力に、サポートするシステムも空間系。意思を持たない存在ですが、使用者にとって都合の良い領域を構築する特徴があります」
「なるほど、その領域内であれば王の意思のままにあの力を行使できるわけか……なんとも残念なヤツだ」
「──ちょっと、聞こえてるんだけど?」
要するに、普段はいちいち穴を開けるのに手間が掛かる【仙王】の『プログレス』。
しかし、WITHシステムの効果範囲であれば、自由自在かつ複数個の穴を開ける。
本人の気質的に難しいだろうが、利用すれば絨毯爆撃なども可能になるはずだ。
空に穴を開け、爆弾を落とす……うん、我ながら鬼畜なやり方である。
なお、俺と『闘仙』は当然ながら聞こえるように話していた。
俺の説明は知識として聞いてほしかったから、『闘仙』は……お小言だからな。
「ところで……リーシーのアレは?」
「本人の適性的に、動物型のシステムが向いていましたので。彼女の能力的にも、あの姿の方が良かったのでしょう」
加えて、リーシー自身は『プログレス』の能力を好いてはいない。
彼女にとって、便利過ぎる能力に支払うべき代償が……非常に深刻だからである。
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