1,660 / 2,721
DIY、守り攻める
物ノ怪本家 その09
しおりを挟むコミの父親とデスマッチを繰り広げていたら、母親に両者共々水を吹っ掛けられた。
お陰でブチ切れモードだった侵羅童子も、その目に僅かながらの理性を宿す。
「このままやってもあの娘は戻らない。それは貴方がよく理解しているはずでしょう?」
「…………」
「えっと、『生者』さん、でしたわね? うちの娘をよろしくお願いしますね」
「……私が何もせずとも、彼女は立派に里の代表者です。里の者たちが、彼女の力になるでしょう」
やはり、母親はコミをちゃんと見てたか。
少なくとも凝り固まった物ノ怪の感性ではなく、子供の覚悟が本物なのか……そして、それを支えられる者が居るかを量っていた。
彼女のお眼鏡に適った……のだと良いのだけれど、とりあえず止めてくれるぐらいには信用してもらえたのかもしれない。
とはいえ、俺ができることなどアイテムによる支援ぐらいである。
それらを使い彼女を支えるのは、彼女が守る民たち自身の方がいいだろう。
「……では、もう帰っても?」
「あら、それはまた別の話よ。見ての通り、異議のある方がたくさん居るじゃない」
「そうでしたか……ですが、長居は無用ですので。いずれ正式な形で、こちらから訪れると。最後に、お伝えしておきます」
通常の方法で転移はできない。
だが、普通の方法ではない──それこそ、最高の魔術使いが編んだ特殊な術式ならば?
新たに作ってもらった三つの術式。
その一つ、それを『愚者の石』から発動。
「では、おさらばを──“非常門扉”」
『──ッ!?』
「……やられたわね」
中身に関してはお任せしたのだが、なかなかいい物をくれた『騎士王』。
どれだけ阻害をしていようと、事前に阻害領域外に転移座標を仕込むだけで発動可能。
なので『ポイントシャッフル』で使おうとしていた座標に、このまま転移できる。
なぜ突破できるのか、そこは意味不明なのだが……うん、解析待ちだ。
◆ □ ◆ □ ◆
鳥居の里
余談だが、逃亡先の座標は里ではない。
便利な能力だからこそ、能力圏内がそれなりに狭いのだ……魔力が潤沢にあっても、さすがに無理な物は無理だった。
まずはドローンで把握した都の外、そしてそこから転移装置(鞘)で脱出したのだ。
「一発での転移はまあ、持ち主の成長に期待しておくとして……“アウトプット”」
手を直角にして、宝石型の装置を翳す。
能力が発動すると、“インプット”時の事象を遡るように光の粒子が溢れ出る。
そして、居なくなったはずのコミが里に現れる──人をダメにするソファでまったりしながら。
「…………」
「……。っ、も、もうであったか」
暇にならないように用意したんだが……これはもう、新しいユーザーが増えたな。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる