虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、守り攻める

物ノ怪本家 その05

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 力による威圧と種族能力──魅了による牽制の影響もあり、この場の者たちがとりあえず騒がしくなることは無くなった。

 それはつまり、味方になってくれる者も居ないということで……。
 もちろん、威圧程度で黙るほど『生者』は口無しでは無いので、必要になれば話す。

 だが今はコミが、コミ自身の力でやり遂げるターンだ。
 あえて普人としての姿を晒したまま、彼女は言葉を紡いでいく。

「私は……そして鳥居の里は、怪ノ物たちとの同盟を行ったのじゃ。そして、ここに物ノ怪たちも参加してもらいたい」

「……それが、何を意味しているのか、理解しているか?」

「無論じゃ。物ノ怪と怪ノ物、これまで分かり合えなかった両者が、共存できる場所。里はこれより、そんな場所を築いていく」

「……もう一度、言おうか。それが、何を意味するのか、分かっているのか?」

 これまでの圧は、ただ抑えていたものを緩めていただけ。
 だが今回のソレは、封じていたものを外したうえでの威圧だった。

 ここに来たときから向けられていた妖気が集束され、コミにのみ注がれている。
 彼女も決して最強ではない……威圧に耐えられない体が、勝手に震え出していた。

「──『……」

「──何度でも言うのじゃ。里は物ノ怪だけでなく、怪ノ物も受け入れる。本家は誰も、彼の地に何もしてこなかった……よって、口出しはさせぬのじゃ!」

 俺もすぐに保険を使おうと思った──が、コミは震えながらも動き出す。
 それを目にして、使おうと思っていた能力の発動を中断する。

「……それが、貴女の答えでいいのね?」

「そうじゃ。朱音様、そして侵羅童子様、認めてほしいとは言わない。じゃが、どうかそのまま放置していてほしいのじゃ」

 母親の問いかけにも、名前を呼ぶという形できっぱりと答えた。
 親子の縁など不要、だからこそ公平な目で見てほしいという訴えだ。

 何となく呆れた、しかしそれでいて嬉しそうな表情を浮かべる母。
 しかし父は……怒りに満ちた顔で、怒鳴るように叫ぶ!

「ふざけるな! 貴様は、物ノ怪としての誇りが無いのか!」

「そのように申すのであれば、誇れるような振る舞いをしてほしかったのじゃ。追放、迫害、そして軽蔑……それらをされた者が、どのようにして誇れば良いと?」

「黙れ! 理屈など関係ない、怪ノ物共はすべて死ぬべき存在! 代々当主様がお決めになさったこと、それを当主の娘である貴様が背くか!」

「……すでに言ったではないか。そう思うのであれば、そのような思想を抱くような場に置いておけば良かったのじゃと。里は、私を受け入れてくれたのじゃ。娘扱いなど、社の管理をさせたくらいではないか?」

 ただの住民としてではなく、里の新たな代表者として追放した。
 コミが恩義を覚えるのは、どう拡大解釈してもこれが限界だろう。

 それ以降、支援したわけでもないし、何より信頼を勝ち得たのはコミ自身の力だ。
 なればこそ、父親の言葉に何の意味も無いのだった。

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