上 下
1,654 / 2,723
DIY、守り攻める

物ノ怪本家 その03

しおりを挟む


 物ノ怪たちが道を成し、導く先にそびえ立つ巨大なお屋敷。
 仄暗い灯りを燈す提灯が飾られ、先へと向かう通路を映し出していた。

 屋敷の門を潜ると、物ノ怪たちは瞬時に先ほどまで居た場所から消え去る。
 その反応は屋敷の奥、訪れた時から放たれていた存在感の居る部屋に向かっていた。

「ツクルよ……」

「その腕輪を付けている限り、絶対に死なない。どうせ何もしなくても勝手に死ぬような男の命だ、好きに使ってくれ」

「ツクル以外の言であれば、私も遠慮をするのじゃが……するだけ無駄じゃろうな」

「ああ、好きなだけ頼れ。知っての通り、殺されても絶対に生き残るからな」

 なんて軽口を叩きながら進んでいくと、やがて巨大な襖の下へ。
 イメージ的には、昔テレビで観た将軍の御成りみたいなことをする部屋だ。

 違うのは通る俺たちが、将軍という上位のポジションでは無いこと。
 そして、頭を下げない代わりに座っている者たちが全員こちらを見ていることだ。

 先ほども同じことをされたのだが、圧が先ほどの比ではない。
 いちおうでも街中、ある程度制限していたのだろう……そして、その枷が外れた。

「孤魅童子様」

「──うむ、行くぞ」

 一歩、また一歩と奥へ。
 非常に長い道は、さながら万里の長城のように険しい道と思えるほど。

 真っすぐなはずのその道を、確かな足取りで進んでいく。
 通り過ぎる物ノ怪の数が百となったとき、目の前の光景が突如切り替わる。

「! これは……」

「父上、母上……」

 遥か先、だがその圧が実像よりも彼らを大きくしているのだろう、不思議とその姿は遠くからでもはっきりと見えた。

 二本角を生やす巨大な鬼、そして九本の尻尾を生やす狐耳の美女。
 コミの言葉を聞かずとも分かった、彼らこそが当主であり彼女の両親なのだろう。

 立場を弁え、まずは頭を下げる。
 コミと共に正座をし、俺だけが平伏。
 いつまでも頭を下げない彼女に、ざわつく周囲……だが、一声で沈まる。

「──我が娘よ、ここを何と心得る?」

「屋敷の部屋、それ以上でもそれ以下でも無いのじゃ。里と本家に上下の関係は無く、あくまでも対等……そういうことのはずじゃ」

「そう、貴女はそれでいいのね?」

「改めて。社の里代表、孤魅童子──お呼びに応じたのじゃ。して、要件とはいかに」

 その振る舞いは親子にも、ましてや主従の関係にも見えない。
 曰く、隠れ里である社の里は、コミが告げた通りいわゆる自治権があるそうだ。

 だからこその振る舞い。
 そして、両親も理由もなくそれを怒るようなことは無かった。

 ──さて、問題はここからだな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

けもみみ幼女、始めました。

暁月りあ
ファンタジー
サービス終了となったVRMMOの中で目覚めたエテルネル。けもみみ幼女となった彼女はサービス終了から100年後の世界で生きることを決意する。カンストプレイヤーが自由気ままにかつての友人達と再開したり、悪人を倒したり、学園に通ったりなんかしちゃう。自由気ままな異世界物語。 *旧作「だってけもみみだもの!!」 内容は序盤から変わっております。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

Ancient Unfair Online ~万能武器ブーメラン使いの冒険記~

草乃葉オウル
ファンタジー
『Ancient Unfair Online(エンシェント アンフェア オンライン)』。 それは「不平等」をウリにした最新VRMMORPG。 多くの独自スキルやアイテムにイベントなどなど、様々な不確定要素が織りなすある意味自由な世界。 そんな風変わりな世界に大好きなブーメランを最強武器とするために飛び込む、さらに風変わりな者がいた! レベルを上げ、スキルを習得、装備を強化。 そして、お気に入りの武器と独自の戦闘スタイルで強大なボスをも撃破する。 そんなユニークなプレイヤーの気ままな冒険記。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...