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DIY、守り攻める
愚賢な術式 中篇
しおりを挟む取引の末、『愚かな賢者』から提供させた三つの術式。
その一つである“星記改悪”を公開し終えたが……うん、まだ逃がす気は無いようで。
俺の居る空間は、『騎士王』と選ばれた者にしか開けない場所。
厄介なことに、従者が勢揃いで干渉しないと『騎士王』が居る間は入れない。
つまり、すでに繋げた『SEBAS』との回線を通じて連絡しても、『騎士王』が途中退出でもしない限り逃げることは不可能。
……そして彼ら円卓の騎士は多忙なので、勢揃いするのは期待できない。
「さぁ、『生者』。二つ目の術式はどのようなモノなのだ!?」
「…………ハァ」
なので、俺をこの状況から助けてもらうことはできないものとする。
別にいいんだけどな、俺も貰った術式を一度は試しておきたいので。
たとえどんな問題があっても、『騎士王』が居ればなんとかしてくれるし。
ある意味最高の環境ではある……が、何となく嫌なものは嫌なんだよな。
「……二つ目の術式は──『検索召喚』」
「ふむ……何も起きないな」
「効果は二つだ。『騎士王』が名前から予想した通り、条件を絞っての召喚。そして、召喚したモノを調べることができるらしい。今回は後者で使ったから、特に何も現れない」
なお、条件を絞れるからといって異世界から召喚……みたいなファンタジーなことをすることはできない。
そもそも召喚、これで星を揺るがすヤバい存在が出てこないように制限が存在する。
これは術式云々ではなく、すべての星が定めたルールのようなもの。
なので創作物でよくある召喚陣、アレで現れる存在は必ず星のどこかに存在している。
箱庭、あるいは亜空間……そういった場所から呼び出されているのだ。
「それで、召喚はしないのか? 何が現れようと、私が何とかしてやるぞ?」
「……それじゃあ、『騎士王』が召喚したのと同じだろ。やりたきゃ自分でやってくれ、どうせ術式は覚えたんだろう?」
「それは言わぬが花というヤツだろう。だがそうか、隠しておきたいのだな」
「…………」
条件を絞る“検索召喚”で座標を指定すると、特定の場所を召喚することができる。
場所の召喚、それは意図的に召喚の制限を破る裏技……。
例えるならそう、『巻き込まれて召喚』。
これを用いれば星を揺るがすような危険な存在だろうとも、どこに居るかという座標さえ分かれば呼び出すことができる。
なのでこれから先、アイスプルに住まう存在がどのように進化を遂げようとも、本当に必要な時には召喚することができる……だからこそ、この術式を欲したのだった。
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