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DIY、守り攻める
愚賢な術式 前篇
しおりを挟むすでに『愚かな賢者』が帰還し、ここに居る理由も無くなった。
なので俺も出ようとするのだが……なぜか『騎士王』がそれを許してくれない。
「…………おい、まだ何かあるのか?」
「その石、そこに刻まれた術式がどんなモノなのか大変興味深い」
「…………」
「大変、興味深い!」
わざとらしい強調が、『騎士王』の意思の強さを表していた。
まあ、別にいいんだけども……やっても損は無いわけだし。
こほんと軽く咳払いをして、口調はいつもの感じに。
無償で見せるのもな……というわけで、あるモノを取り出す。
「──では、こちらを」
「…………なぜこの石を?」
「見物料ですね。せっかくですし、何か刻んでいただけると」
「……仕方がないな」
なんだかんだ言いつつ、結局やってくれるのが『騎士王』のいいところ。
内容は向こうに任せておくとして、さっそく術式を試してみようと思う。
「では、一つ目──『星記改悪』」
「……特に変化は無いな」
「どうやら、既定の数値以下であれば実際に反映させられるようですね。レベルの方を、確認してみてください」
「──なるほど、レベルが1になっている。しかし……本当に違和感が無いな」
本来なら、放つ存在感なども下がるのですぐに分かるのだが……もともと虚弱すぎる俺なので、999という膨大な数値が一気にリセットされても全然変わらないようだ。
「そしてこれ、武器など鑑定で情報を開示できるものならば改竄可能なようです。耐久度の減少や、攻撃補正の低下など……そういった観念から、存在を開示される前に封印されたようですね」
「私も知らないような情報をどこで仕入れたのやら……まあいい、それを他者へ強いることは可能か?」
「理論上は可能ですが、ほぼ不可能ですね。僅かでも抵抗されれば、すぐに無効化されますので。精神干渉などよりも、かなり低い成功率となるでしょう」
相手のステータスを1か0にするだけで、勝手に自滅することもあるだろう。
……そう考えると、俺という存在は本当に希少なんだな。
「そんな術式を『生者』は何故望んだ?」
「ステータスではなく、私が作った物に施したく思いまして。二つの意味で、楽しめるようになるかと」
「……そうして改竄された品を受け取った者たちは、どう思うだろうな」
最初の目的はポーションの回復量などを弄ることだったのだが、下げた数値をいつでも戻せるみたいなので……それを利用すれば、真の力を解放! ごっこができるだろう。
そしてさらにもう一つ、『SEBAS』的な使い方があるらしいが……これはまた、別の機会に。
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