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DIY、守り攻める
虚無の魔法 後篇
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転移され、やって来た場所。
おそらく冒険世界のどこでもないんだろうなぁ、と感覚的に思えるところだった。
理由は単純、本当に何も無いから。
昔はなぜかよく招かれた神域同様、領域の主が自由に環境を変えることのできる摩訶不思議な場所……それによく似ているのだ。
思い返せば、一度ここに来た記憶はある。
たしか……『プログレス』のことで、対抗策云々を話した時だっただろうか。
しかし、そのときは勝手に自己完結してこの場所についてあまり深くは聞かなかった。
が、今回は追手が来るかもしれないので、ちゃんと聞いておかねばなるまい。
「ここは、どういう場所なんだ?」
「代々『騎士王』が外部への悪影響を懸念した際、問題を処理するための場所だ。星との約定によって、『騎士王』とその配下にしか移動の権利は与えられていない」
「……つまり、俺って今監禁されたのと同意なのか?」
「うむ、そうなるな」
……『SEBAS』との接続は、ギリギリ断たれていないようだ。
外部から遮断されているとはいえ、冒険世界の中なのが幸いしたな。
だが、サポートは受けられないと思っておくべきだ。
どうにかしてくれるだろうが、それもすぐでは無いだろうし。
「それで、ここで蹴りを付ければ良いと?」
「あくまでも向こうは、『生者』に会わせろという要求をしてきただけだからな。それ以降に責任は無いだろう?」
「……まあいいや。最悪、死んでもお断りだと言えばいいからな」
「休人にのみ許されたジョークだな」
いや、たぶん対休人用の策なんてとっくの昔に用意されているだろうよ。
死なない相手に効く魔法、そんな魔法を創りたいと思うような連中なんだしな。
◆ □ ◆ □ ◆
「ほぅほう、お主が“虚無”とやらの術式の持ち主じゃな」
「え、ええ、私は──」
「名前は言わんでも結構。儂も名乗る名などとうに忘れておる。鑑定でも何でも使って、好きに知っておけ」
幼女、幼い少女のことだ。
だが少なくとも、外見だけ幼女であっても目の前の人物がそんな見た目相応に幼いようにはまったく思えない。
それに、何と言うか女性らしさもそこまで感じないというか……うん、創作物でもあるような、老人が幼女になったみたいなイメージが一番しっくりくる。
なお、『騎士王』は俺たちを見張るということで離れた場所で待機していた。
彼女が居なければ帰れないので、『愚かな賢者』も納得している。
「単刀直入に聞くぞ。あの魔法は即座に行使できるのか? それとも何らかの準備が必要なのか? スクロール化できているのじゃ、すでに確立しておるのじゃろう?」
「え、えっと……」
「ふむふむ、時間はたっぷりあるぞ。一言一句聞き逃さんゆえ、お主の知り得るそのすべてを儂に教えてくれ」
そう言う『愚かな賢者』は、すでに俺と自分の周りにある魔法を展開していた。
それは“時空停止”という、超高位の魔法なのだが……空間ごと止まっているのだ。
つまり外部に出ようにも、一定距離以上離れようとすれば空気が固まっている。
固まった空気は不動の壁となり、俺の脱出は防がれる……そういうことだ。
──口調は優しいが、まったく逃がす気が無いということである。
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