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DIY、守り攻める
幽源の世逃げ その11
しおりを挟む攻撃を受けるとは言ったが、反撃をしないとは言っていない。
というか、無抵抗の相手をフルボッコにするだけでストレスは解消されないだろう。
「──“神持祈祷:マジックリペア”」
自動防衛の象徴『バトルラーニング』を解除し、代わりに起動するのは魔法や魔術の耐久度を回復させられる『プログレス』。
これにより、“千変宝珠”の使用時間が飛躍的に増やせる。
俺の二つしかない特化したステータス、その一つである魔力を活かすやり方だ。
元より、『バトルラーニング』が無くとも『SEBAS』が居れば同じことができる。
大会の時にはできなかったが、上書きができるからこその反則技だな。
「……準備はもう充分か?」
「ええ、お時間をご用意していただきありがとうございます。全身全霊を以って、受けさせていただきます──“千変宝珠・双盾”」
「ふざけてんのか? はなっから攻撃を捨てるなんて」
「いえいえ、全力を防ぐからこその対策ですよ。さぁ、どうぞ」
鳴り響く警鐘を無視して、体の操作を結界による強制駆動へ委ねていく。
代わりに意識は『マジックリペア』と二つの盾に集中し、ゴロムの攻撃を待ち受ける。
「──“疾風連斬”」
そして、警鐘が止んだ。
その瞬間、ゴロムはすでに斬撃を振り終えていた。
残るのは盾への衝撃と、それを切り裂いて振るわれる斬撃。
認識外の攻撃、『バトルラーニング』でも防げないソレを──『SEBAS』は防ぐ。
自分が何をしたのか分からない、だがいつの間にか何度も死んでいた。
体はこれまでとまったく別の場所を見ており、盾も数度破壊されるほど損耗している。
俺の内情を知る者が居れば、確実に負けていたと言えるだろう。
しかし、傍から見ればいっさいの無傷で凌いだ攻撃──放った者から見れば違った。
「……お前、どうやったら死ぬんだよ」
「死にませんよ? だって、『生者』なわけですし」
「…………ハァ、さっきのが全力だ。一度に二十回も斬って死なないヤツを、どうやって殺せるってんだよ」
《──正確には二十二回、旦那様は剣を振られておりました》
うん、その回数がバッチリ分かっているのがマジで怖い。
さすがは『SEBAS』なのだが、俺の体は本当にどうやって防いだのだろうか。
「おい、【幽王】様よ。俺はこれから、どうすりゃいい? また地下でおねんねでもしてればいいのか?」
「いいえ、働いてもらうわ。幽魔族、そして人族との和平のために!」
「……ったく、騎士なんて面倒な役割はもう諦めたはずなんだがな」
まあ、この後はお察しの通り。
ゴロムは改めて、【幽王】へと忠誠を誓うのだった。
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