虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,587 / 2,812
DIY、多世界と交流する(物理)

多世界バトル後篇 その20

しおりを挟む


 突如退場した『覇獸』、だがすぐにルール的に問題は無いと判明した。
 そもそも無差別部門なので、あまりそういうところは気にしていなかったようだ。

 そんなこんなでしばらくして、四回戦──再びショウの姿が舞台上に現れる。

「……ここで来たか、【冒険勇者】!」

《旦那様、おそらくは……》

「ああ、俺とてショウが絶対に勝つなんて考えちゃいない。ルリがどれだけ祈っても、絶対に存在しない可能性だけは、どうしようもないからな」

 ショウの相手となる【冒険勇者】は、間違いなく最高峰の実力者。
 その剣は冒険世界において、並び立つ物なき『最強』の武器。

 この幻想世界であろうと、不完全ながらその性質は生きる。
 それゆえに、ショウは間違いなく敗北するだろう。

 その運命は、たとえ現人神となったルリであろうと干渉不可能。
 微小な確率を高める祈りの力では、0を1に変えることだけはできない。

「──始まったか。やっぱり、さすがに戦力差があり過ぎるな」

《彼の者には星剣だけでなく、神鎧もございます。装備すれば、無限の再生力と活力が与えられるとのこと》

「……おまけに権能で無制限転移までできるわけだし、どうしたら勝てるのやら」

 相手の武器の性能を絶対に超える剣、今使用しているのはそれだけだ。
 しかし、その気になれば述べた通りのチート能力がいつでも使える。

 それらを掻い潜り、勝利できるほどショウはまだ成長していない。
 相手は【冒険勇者】、冒険世界を代表する【勇者】であり、『最強』の星具使い。

「ショウは……様子見か。というより、いきなり“オーバーブレイブ”を使っても無意味だと察したか。そして、代わりに用いるのはアイテムっと」

《強化ポーション、機械兵器、そして魔道具など……多くのアイテムを持っていますね》

「それだけ冒険をしているわけだ。けど、それでもまだ遠い」

 魔道具と機械の内、攻撃を行う物が飛んでいくのだが──すべてが一瞬で潰される。
 全方位からの射撃も、星剣を突き立てて生み出す衝撃波で無効化していた。

 ショウはショウで、離れた距離から斬撃を無数に飛ばす。
 射撃よりは威力があるからか、しっかりと剣に当てて弾いている。

「……一歩も動いてないな、【冒険勇者】」

《これまでの試合でも、同様に一歩も動かずに勝利してきました。それが自身に課した制限なのでしょう》

「まあ、相手が『騎士王』とかだったらすぐに動くんだろうけどな」

《旦那様が相手でも動くでしょう。『生者』の権能を殺し切るには、不動のままではできませんので》

 ……なんとも複雑な心境だ。
 一方、ショウはついに[シャロウ]を発動させて周囲に多くの剣を浮かべる。

 同時に“チェインソウルズ”によって、自身の持つ剣に強化の性質を付与。
 速度が向上し、【冒険勇者】を翻弄しながら剣を振るっていく。

 冒険世界において、『剣皇』として名を馳せる星(鉱)剣使いのショウ。
 だが、【冒険勇者】の持つ星剣は、持ち主に『最強』の力をもたらす。

「剣技自体では上回っているんだがな……最適化機能が便利過ぎるな」

 かつて『騎士王』が言っていた、星剣の能力の一つ──最適な剣筋を見せる機能。
 そして、ありとあらゆる冒険世界のアイテムの能力を、星剣は再現できる。

 それらの能力を組み合わせると、視界に映る剣筋に合わせて、自動迎撃を剣自体に行わせることも可能だ……ショウの高速剣舞に対して、傷一つなく捌いているのがその証拠。

 ──しばらく経って、【冒険勇者】がショウを弾き飛ばした。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...