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DIY、多世界と交流する(物理)

多世界バトル中篇 その26

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 世の中にはネタ武器という物が存在する。
 効率を求めるでもない、性能を求めるでもない……そこにはただ、ロマンがあった。

 そんな武器は手入れや整備をするのも一苦労で、そもそも手を加えることができる職人が少ない。

 例えば魔本、本に予め術式を刻むことで適性に関係なく魔法を使えるようになる。
 だが、作るには製紙系の技術に加えて、刻む魔法のスキルと魔法陣の技術も必要だ。

 そう、ネタ武器は制作や使用に複数のスキルが必要となる場合が多い。
 そのため一点に特化した者に比べ、劣っていることもある。

「だからこそ、頼まれればどんな武器でも魔道具でも修理する『何でも屋』だったんだけどな……うーん、どうしてこうなった」

 一番の理由は、具体的に俺がどの分野に長けているのか分からないからだろう。
 舞台を見れば、休人二人と『学者』が自身の特化した分野で観客に対応している。

 対する俺は舞台でも見せた通り、さまざまな分野で活躍するジェネラリスト。
 だが、上位四人でなくとも優れた職人はいるわけで……スペシャリストが頼られる。

「となると、知人しか来なくなるんだよな。はいよ、いらっしゃい」

「ずいぶんと楽しそうではないか『生者』」

「そういうお前こそな。明日の部門、お前は参加するのか? なあ、『騎士王』様?」

 一人目のお客様は、冒険世界で五指に入るほどの強者『騎士王』。
 何をやらせても最上級、全能力を対象にできる:DIY:みたいな権能の保持者だ。

「いや、参加はしない。『騎士王』、そして星具に選ばれた者たちは、己が守護する世界以外では力を十全に振るえぬからな」

「へぇ、そんな縛りがあったのか」

「……逆に、『生者』がどうして変わらぬ実力を発揮できるのかが気になったんだがな」

「ん? いや、制限されるほど強くないからに決まっているだろ。いくら星がそんな細かいルールを設けているにしても、能力値1とか赤子以下の存在に、いちいち枷をやってたら器量が小さいとか思われないか?」

 案外、これが意外と当たっているかもしれないな。
 何を以って強者と定義するのか、普通なら分かりやすい数値──能力値かレベルだ。

 しかし、現状あらゆる生物内で最強のレベルを持つ俺にいっさいの制限が無い以上、他の部分で決まっているのだろう……まあ、いずれ調べてみるとしよう。

「それで、わざわざここに来たってことは何かしらの依頼があるんだろう? 何を修理すればいいんだ?」

「うむ、これを頼みたい」

「…………」

 魔術で出したのか、空間から突然現れたのは魔物を丸々一匹。
 突然の出現に、周囲の人々は驚いているのだが……俺は別のことに驚いた。

「やはり、『生者』が居るからだろうな。この形で現れたのだ」

「……これを、どうしろと?」

「『生者』の技術を見せてほしい。どのように加工してくれても構わない、何か役立つ形にしてくれ」

 それは、世界におそらくたった一匹の希少な個体──ユニーク種の遺骸。
 注目なんて浴びて当然……ちくしょう、分かっててやったな!

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