虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,527 / 2,831
DIY、多世界と交流する(物理)

多世界バトル前篇 その20

しおりを挟む


 それからの俺は死にまくった。
 だがその死因は『死を愛す者』によって記載され、考察材料が増えていく。

 魔法自体は、どれも初歩中の初歩。
 低性能でありながら、なぜかそれが体内で発生するため抗うことなく死んでしまう。

 本来、それは非常に高度なことだ。
 なぜなら人は、無意識的に体内へ干渉する魔法を拒絶しているから。

 隠しステータスである『MIN』、魔力防御と呼ばれる数値がそれを高めている。
 それだけでなく、魔力が多い者は身体強化と同じ要領で保護膜を張っているらしい。

 そんなこんなで、内部から魔法などで相手に攻撃するのは非常に難しいのだ。
 それを可能とするのは、圧倒的な差……もしくは特殊な能力だろう。

「……抵抗を無効化、もしくは何らかの形で通すことができる能力でしょうか」

「仕掛けを言うわけないじゃない」

「ええ、構いませんよ。それに、そろそろ始める予定でした──“神持祈祷:サウザンドエッジ”」

「なっ……!?」

 祈りを天に、神に捧げると、いつにもなく光が差し込むという演出が発生する。
 まあ、いいかと思いながら求めた能力を起動──大量の剣が地面から生えた。

 突然の変化に驚く対戦相手、だが俺は冷静に『バトルラーニング』に身を委ねる。
 大量の刃を認識すると、体は近くのそれを拾い上げて投擲を開始。

 とっさに魔法で防御を始めるが……この舞台に生えたのは千本の刃。
 投擲の動きも完璧なので、曲射で防壁を越えて攻撃している。

 そうなると、自分を包む殻のように防御するしかなくなるが……そうなれば、脱出することは不可能。

「終わりです──“神持祈祷:マジカルロジカル”」

「なん、で──」

「なるほど、魔力に関する事象の判定を弄れる能力ですか。では、武器に魔力を流し込んでおけば使えますね……ダメージ判定は魔力にしました。どうぞ、耐えてくださいね」

 俺の体を破壊しながら、連続剣戟で一気に彼女の魔力を削っていく。
 これは彼女の『プログレス』、ダメージ計算などを改竄できる能力だ。

 今までの殺し方は簡単、魔法のダメージ判定を運の数値による減衰で通す。
 他の人でも大して上げていない数値で魔力抵抗を計算され、あっさりと通ったわけだ。

 厄介なのはこの際、無意識の魔力抵抗の方もいっしょに計算に入ってしまう点。
 なので数値で負けてしまうと、完全に魔法が通り──ああなっていたわけだ。

 俺が使う場合、初期化された状態なので大した改竄はできない。
 せいぜい減らす数値を、生命力ではなく魔力にしただけだ。

 だが、『貧弱な武力』と『闘匠』を発動して、確実にダメージを与えれるようにした。
 どんどん攻撃すれば、その分だけ彼女も魔力を減らすことになる。

 抵抗しようにも、その魔力すら今は使えなくなる……やがて魔力が枯渇し、気絶した彼女から俺は勝利を得るのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...