虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,519 / 2,813
DIY、多世界と交流する(物理)

多世界バトル前篇 その12

しおりを挟む


 ガキウをリタイアさせ、無事に二回戦への進出を果たした俺。
 舞台から出て、控室として用意された一室でまったりと休憩中。

《お見事です、旦那様》

「俺自身は何もしていないけどな……しかしまあ、上手くやれたものだ」 

 俺が見せ札として開示しているのは、器用に戦う『バトルラーニング』だけ。
 調べたとしても、まだ職業や称号といった情報は知られていない。

 ほとんどの者は、そうして段階的に自分の力を発揮していくだろう。
 知られればそれだけで、不利になる……逆に知られなければ有利に戦えるのだから。 

「考察スレでどういう意見が挙がってる? ああ、必要な情報だけ抽出してくれ」

《畏まりました──検索完了。どうやら道士系のスタイルだと予測されているようです。短剣を使っていたので、盗賊系の可能性もあるとのこと》

「うんうん、意図してはいなかったけど、上手く誤魔化せたみたいだな。次はそれをなぞるのか……それともまったく異なるスタイルで戦うのか。いずれにせよ、あともう少しは待たないとな」

 予選での不死身っぷりは、一度切りの攻撃無効化という認識だったし、まだまだやれることは多い。

 数十分も経てば、再び抽選を行った後に対戦相手が決まるはず。
 なお、ショウやマイ、ルリは参加していないので、必敗はないだろう。

 ……だからこそ、父として夫として、負けるわけにはいかないのだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

≪赤コーナー、冒険世界より参戦。何をするのかまさに未知、今度はいったいどんな戦いで私たちを楽しませてくれるのか──アンノウン!≫

 前回同様、律義に入場門から舞台まで徒歩での移動をする俺。
 楽しませるとか言っているが、さすがにあの勝ち方は問題だったようで……。

「酷いブーイングですね」

《そこまでして勝ちたいのか、といった意見が多々ございましたね》

「まあ、今回どう勝つかはノリで決めるさ。彼らの望む通り、正攻法でもいいし邪道でやるのも気分次第ってことで」

 なんて会話をしている内に、今回の対戦相手の情報が開示される。

≪青コーナー、冒険世界より参戦。その剣は今度こそ、アンノウンを切り裂くことができるのか──ソイド!≫

 現れたのは、共に予選を突破した少年。
 どういう確率を経たら、彼と再会することになるのやら。

「全力で行くから」

「ええ、ええ。どうぞご自由に。ならばこちらも、楽しませていただけそうですので」

 全力で行くとは答えられない。
 俺の持つ全力は決勝戦まで温存し……そのまま使わないぐらいがちょうどいいから。

 少年は剣を引き抜き、構える。
 俺も『バトルラーニング』を発動し、脱力した状態で立った。

≪二回戦──開始!≫

 アナウンスと共に、バトルが始まる。
 少年が動き、俺の体も応じるように動き出した……どうやって勝とうか。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...