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DIY、強者の宴に混ざる
強者の宴 その22
しおりを挟むこの世界が生みだした最高傑作『騎士王』と、逆に意図せず誕生したであろう最凶最悪になりかねない【魔王】。
彼らが今宵、相対する。
……まあ、【魔王】は先ほど【勇者】に手酷くダメージを受け、分体として小さなスライムみたいな状態で俺の肩に乗っているが。
『直接顔を見るのは今日が初めてか。改めて礼を述べよう、かけがえのない友を得たのは貴様のお陰だ』
「其方から礼を言われる筋合いはない。これまで通り、一方的であるからな。しかし、聞き捨てならないものがあった……はて、友とはいったい?」
『冗談を言うな。この場において、誰のことなのかなど一目瞭然であろう。もっとも、それを理解できぬほど浅い関係だったと言うのであれば、致し方なかろうな』
「分からぬよ。仮に友と呼ぶのであれば、その者とは対等な存在のはず……決して、生存のために使う、なんてことはないだろう」
そう言い終えると、互いに笑い出す二人。
怖いよ……これまでやってきたどの商談よりも、恐ろしく裏のある笑い声なんです。
しかし、これ以上の騒ぎを起こすわけにはいかなかった。
かといって、俺が何かをすれば二人は必ず反応してしまう……逃げ場がない。
逃げる云々で言うと、肩に【魔王】が載っている以上、その場を離れるのもアウト。
だが、正直もう会話を聞いているのも辛いので……覚悟を決めて動く。
「お二人とも。盛り上がるのもよろしいのですが、少々聞いていただきたい」
「『…………』」
ピタッと会話を止め、こちらを見る二人。
これで第一段階はクリア、続いて交渉フェイズである第二段階。
「その……仮に、仮にの話なのですが、その【魔王】さんのお友達がお二人の会話を聞いていれば、ひどく悲しむことでしょう。なぜならその友達は、自分の友同士が争うことなど望んでいないからです」
『ほう、ならば問うぞ。すでにこれまでも、何度も衝突し合ってきた。大将同士が相まみえずとも、間接的に死者まで出している。取りなす者がいて、それだけでわだかまりが無くなると思うのか?』
まあ、人族と魔族でこれまでも何度かドンパチしてきたらしいし。
俺も俺で、『騎士王』に協力して魔族の侵攻を邪魔したことがあったよな。
今は真面目モードなので、『騎士王』もその答えを聞こうと冷徹な目を向けてくる。
だがその目は、その奥で熱く俺の答えを求めている……気がした。
ずいぶんと器用な王様に苦笑しながら、俺はその答えを述べていく。
「──無くなりはしません。ですが、少しずつ減らしていくことはできるでしょう」
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