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DIY、強者の宴に混ざる
強者の宴 その20
しおりを挟む万能の極みたる『騎士王』と、名の通りである『器用貧乏』。
両者の権能をその腕に秘め、【魔王】は魔剣である[銀閃]を振るう。
起動していた『プログレス』は、その再現基である腕を失った。
魔法を射出した以降、いくらかの制御を自身で行い腕そのものを解除している。
それ以上に集中すべき権能を、今はその身に体現しているからだろう。
事実、二つの権能を使い始めて【魔王】はその剣捌きを向上させている。
「星剣には、使い手に最適な剣筋を見せる力もあるという」
「……本当に理不尽ですね」
「ああ。だが、それにしても凄まじい……アレが重ねた結果なのか」
「いかに『騎士王』の権能が全スキルに通じていると言っても、その習得自体は本人の才覚に依ります。しかし、『器用貧乏』は成長が途中で落ち込む代わりに、それらを模倣という形で習得可能ですので」
どちらも権能も、時間があればあらゆるスキルを極みに至らせることはできるだろう。
レベル1に至るまでが大変な『騎士王』に対し、レベル1以降が大変な『器用貧乏』。
だが、レベル1までを『器用貧乏』が担当し、以降を『騎士王』が担当すれば……当然ながら、瞬時に習得できるうえ、どこまでも成長していくわけだ。
「スキルを次々獲得しているようですね」
「剣術から成る派生のスキルはもちろんのこと、流派の型も得ているようだ。先ほど用いていた武人の得意とするスキルも、権能の恩恵で習得している」
「羨ましい限りです。私は二つ分の権能の代償で、特殊な形以外でもスキル習得は決してできませんので」
愚痴を零しながらも【魔王】を見れば、剣にスキルの補正が乗り始めている。
武技のエフェクトが発生し、星剣の最適な斬撃を尽く弾いていく。
これまではスキルは持たず、その権能や職業の恩恵のみを使っていたのだろう。
だが今は自前のスキルを持ち、武技をなぞることで最低限の力で威力を出している。
「──【魔王】とは力の……特に暴力の権化というイメージが強い。それは魔族に対する思想にもよるが、それ以上に魔族が魔力をごリ押すことが多いからでもある」
「強力な魔法を発揮すると?」
「それだけでなく、有り余る魔力を身体強化に使ったりもする。そのため緻密な技ではなく、豪快な力が魔族の多くで用いられる」
そういえば【魔王】も、力こそがすべてと言っていたことがあったような……うん、言葉通りだったわけだ。
魔法による牽制はとうに終わっている。
しかしそれを継ぐように、恒常的な効果を発揮するスキルによる強化が今では発動している……その効果はデカい。
これまでの剣戟を超え、【魔王】は星剣に強烈な一撃を叩き込む。
剣そのものが優れていても、【勇者】には限界が存在する。
優れた武人の剣技によって、力量以上の動きを発揮する【魔王】。
結果、星剣が【勇者】の手から離れて──【魔王】の心臓に突き刺さった。
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