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DIY、強者の宴に混ざる
強者の宴 その19
しおりを挟む複数の浮かぶ腕を、『プログレス』で生み出した【魔王】。
それぞれの腕が優れた魔法を操る何者かの腕であり、異なる魔法を発動していた。
詠唱をする口は一つしかない……そんな常識も、【魔王】はあっさりと無視する。
その掌に生みだされた口が言葉を紡ぎ、無数の魔法を発動した。
「……最上位の魔法、もしくは禁忌に近い魔法ですね。あれらの腕は、いったいどれほどの使い手だったのでしょうか」
「さてな。過去の【魔王】が相対した者ともなれば、確実に強者。それに見合うだけの実力を持ち合わせているだろう」
太陽のような劫火、異様に透明度の高い氷塊、内部で雷が迸る暴風……宮殿そのものを揺さぶる激震。
その他、禍々しい魔法だったり逆に神々しい物なども含め、【魔王】が展開する膨大なエネルギーを秘めた魔法の数々。
それらを向けられた【勇者】は、ただ剣を構えて【魔王】を見つめる。
そう、魔法は宙に浮く腕によって展開されたもの──【魔王】もまた剣を構えていた。
足元も覚束ない地震によって、それなりに頑丈だった舞台も砕け始める。
そして、罅割れが起きたそのとき……両者共に動き出す。
「最後ですね」
「ああ、これで終わりだ」
過去の英傑の力を読み取り、彼らの軌跡をその身に体現する【魔王】。
理不尽な星の威を体現し、抱いた使命を胸に剣を構える【勇者】。
……正直、武器とかやっていること的に、どっちもどっちな気がするのは不思議だ。
魔法を牽制に使いながら、【魔王】は少しずつ距離を詰めていく。
ダメージを直に受ければ【勇者】と星剣の力で、【魔王】には致死ダメージとなる。
すでに【聖女】の腕は使わず、代わりにそこには異なる腕を宿していた。
ただ模倣するより、当人の部位を使う方が再現の精度が上がるのだろう。
右腕には誰とも分からない、武人とは思えないほっそりとした腕を。
そして左腕にはやや見覚えのある、才腕ながらしっかりと筋肉をつけた女性の腕を。
「いつの間に取られていたのですか?」
「…………【魔王】め」
「しかし、片方は『騎士王』さんの腕ということは間違いないでしょうが、もう片方の腕はいったい誰の物なのでしょうか?」
「私の目利きが正しいのであれば、アレはおそらく先代の『器用貧乏』のモノだな」
だいぶ前に話だけは聞いていた、権能を強奪されたという『超越者』だったか。
ソイツの権能の効果はありとあらゆるスキルを模倣できるうえ、成長率を上げられる。
ただしそれが中途半端な段階で停止して、成長率が大幅に下がってしまう。
そして、『騎士王』の権能は全スキルを使用可能にして、成長率を極限まで高める。
「貴方がたの権能があれば……さぞかし、凄いことができそうですね」
才覚さえあれば、全スキルを極限まで強化できる『騎士王』。
中途半端な強化しかできない代わりに、全スキルを解放可能な『器用貧乏』。
それら二つの権能が、もし同一の存在に宿るなら……それは紛れもなくチートだな。
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