1,491 / 2,733
DIY、強者の宴に混ざる
強者の宴 その16
しおりを挟む星剣。
本来意味するのは、星脈から溢れ出た星の力を内包した剣のことだ。
広義の意味で言えば、俺がショウに渡した『星鉱剣[フライハット]』もその一種。
しかし、目の前で力を解放するその剣は、それらとは別格の存在感を放つ。
「正真正銘、冒険世界が認めた【冒険勇者】に与えられる星具だ。アレこそが、間違いなくこの世界最強の武器なのだろう」
「アレが……」
舞台の上で戦う【魔王】と【勇者】。
強者の模倣で無双していた【魔王】に対して、切り札を使うこの世界の【勇者】。
たしかにその存在感は尋常ではなく、結界が無ければ観ていただけで死んでいた。
……それはそれでサンプルが欲しかったのだが、今回は自重しておく。
「代々『騎士王』が振るう聖剣、『生者』が創り上げた星鑓も指折りの逸品だ。しかし、この世界で用いるという条件であれば、ありとあらゆる理を超えて、アレこそが最強の一振りとなるのだ」
「……それは、どういった理屈で?」
「子供の我が儘のような物だ。自分の領域において、自分が一番強い。どれだけ強くても関係ない、自分の中では自分が一番だ……そういったありえないはずの理を、世界が他に強要しているだけのこと」
「なるほど、それは……もう、どうしようもありませんね」
星剣を解放した【勇者】は、ただ剣を薙ぐだけだ。
しかしその瞬間、いつの間にか【魔王】はその剣の前に立ち斬撃を防いでいる。
「剣を振るのならばそれは当たる。斬撃を届かせるのではなく、当たることを強要する。それがあの剣の第一段階」
「……理不尽過ぎではありませんか?」
「その分、解放には必ず条件を満たしておく必要がある。今回の場合、一定時間以上の戦闘継続の条件を満たしたのだろう」
「お詳しいですね」
どうやら代々の『騎士王』が、そういう部分も調べていたらしい。
ついでに言うと、過去何度か【勇者】とやり合った記録もあるそうで。
「……模擬戦だけでなく、狂った【勇者】の討伐命令などもあるからな。その場合、剣自体をどうこうすることは不可能と伝えられているぞ」
「そうみたいですね」
「その点、【魔王】の剣はよく持つものだ。元より威力の高い剣、そこに【勇者】が持つ対【魔王】の補正もある分、かなりのダメージになると思うのだが……」
「その絡繰りも、もう間もなく開示せざるを得なくなりますかね。ええ、私も大変興味深く思いましたよ」
おそらく直撃すれば、【魔王】とて無事ではいられないだろう。
それでも【魔王】には勝算がある、そう分かる不敵な笑みを浮かべていた。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる