1,490 / 2,752
DIY、強者の宴に混ざる
強者の宴 その15
しおりを挟む場所は変わって再び宮殿内部。
中央のコロシアムでは現在、二人の強者が相まみえていた。
「【勇者】と【魔王】、彼らの戦いをこの目にすることができるとは……」
「ふっ、では『生者』も戦ってみるか? あるのだろう、【勇者】の力は?」
「いえ、遠慮しておきます……それに、私のモノは生産に特化しておりますので」
嗾けようとする『騎士王』にそう答え、眼下で繰り広げられる死闘をジッと眺める。
俺の【生産勇者】は戦闘能力を削って生産能力を高めたんだから、勝てるわけがない。
現に行われている戦闘は、高い能力値を生かした超音速機動によるもの。
観測自体はエクリの補助で可能だが、実際に戦うとなると……厳しいだろう。
「では、賭けをしないか? どちらが勝つのか……」
「遠慮しておきましょう。なんというか、アレは──勝負ではないでしょうから」
超高速で動く【勇者】だが、【魔王】にはそれらをあっさり捌かれている。
むしろ余裕そうな雰囲気で、未だに剣を鞘から抜いていない。
「あの剣……『生者』、お前の物だな」
「『鏖剣[銀閃]』、その剣身は他者を傷つければ傷つけるほど鋭く硬くなります」
「なんと恐ろしい物を。だが、今はその剣を使っていないというわけか」
「……実力に差があり過ぎるんですよ。おそらく、これまで存在したどの【魔王】よりも強いんですから。たとえ、覚醒した【勇者】であろうと一筋縄ではいきません」
戦っている【勇者】は覚醒していた。
その職業名は【冒険勇者】、この世界が公認したオンリーワンな【勇者】様だ。
なお、【魔王】は純粋に【魔王】だが、それが弱いという意味ではない。
事実、ドッペルゲンガーの【魔王】だからこそ、その戦い方は無限に存在する。
「あの動きは『拳王』のものか。剣の捌き方は【剣王】。時折、私の魔力操作も真似しているようだな」
「『騎士王』さんは、模倣についてどうお考えですか?」
「それもまた立派なやり方だとは思う。真似たモノが我流ではなく、確立した武なのであればなおのこと。型をなぞるだけでも、十二分に意味が在るはずだ。そして、今回の場合は……それ以上の効果だな」
「この場に居る人々は、戦いの中で確立した武がありますものね。【魔王】は誰よりも模倣に長けた存在ですので、それぞれの長所を生かして繋げていますね」
逆に本来のスタイルをいっさい見せることなく、【勇者】を圧倒しているのだから凄いことこの上ないだろう。
だが、【勇者】も黙って敗北を認めるわけにはいかないだろう……握り締めた剣が強く輝いたとき、戦況が大きく動き始める。
0
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
異世界行ったらステータス最弱の上にジョブが謎過ぎたからスローライフ隠居してたはずなのに、気づいたらヤバいことになってた
カホ
ファンタジー
タイトル通りに進む予定です。
キャッチコピー
「チートはもうお腹いっぱいです」
ちょっと今まで投稿した作品を整理しようと思ってます。今読んでくださっている方、これから読もうとしていらっしゃる方、ご指摘があればどなたでも感想をください!参考にします!
注)感想のネタバレ処理をしていません。感想を読まれる方は十分気をつけてください(ギャフン
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる