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DIY、強者の宴に混ざる

強者の宴 その15

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 場所は変わって再び宮殿内部。
 中央のコロシアムでは現在、二人の強者が相まみえていた。

「【勇者】と【魔王】、彼らの戦いをこの目にすることができるとは……」

「ふっ、では『生者』も戦ってみるか? あるのだろう、【勇者】の力は?」

「いえ、遠慮しておきます……それに、私のモノは生産に特化しておりますので」

 嗾けようとする『騎士王』にそう答え、眼下で繰り広げられる死闘をジッと眺める。
 俺の【生産勇者】は戦闘能力を削って生産能力を高めたんだから、勝てるわけがない。

 現に行われている戦闘は、高い能力値を生かした超音速機動によるもの。
 観測自体はエクリの補助で可能だが、実際に戦うとなると……厳しいだろう。

「では、賭けをしないか? どちらが勝つのか……」

「遠慮しておきましょう。なんというか、アレは──勝負ではないでしょうから」

 超高速で動く【勇者】だが、【魔王】にはそれらをあっさり捌かれている。
 むしろ余裕そうな雰囲気で、未だに剣を鞘から抜いていない。

「あの剣……『生者』、お前の物だな」

「『鏖剣[銀閃]』、その剣身は他者を傷つければ傷つけるほど鋭く硬くなります」

「なんと恐ろしい物を。だが、今はその剣を使っていないというわけか」

「……実力に差があり過ぎるんですよ。おそらく、これまで存在したどの【魔王】よりも強いんですから。たとえ、覚醒した【勇者】であろうと一筋縄ではいきません」

 戦っている【勇者】は覚醒していた。
 その職業名は【冒険勇者】、この世界が公認したオンリーワンな【勇者】様だ。

 なお、【魔王】は純粋に【魔王】だが、それが弱いという意味ではない。
 事実、ドッペルゲンガーの【魔王】だからこそ、その戦い方は無限に存在する。

「あの動きは『拳王』のものか。剣の捌き方は【剣王】。時折、私の魔力操作も真似しているようだな」

「『騎士王』さんは、模倣についてどうお考えですか?」

「それもまた立派なやり方だとは思う。真似たモノが我流ではなく、確立した武なのであればなおのこと。型をなぞるだけでも、十二分に意味が在るはずだ。そして、今回の場合は……それ以上の効果だな」

「この場に居る人々は、戦いの中で確立した武がありますものね。【魔王】は誰よりも模倣に長けた存在ですので、それぞれの長所を生かして繋げていますね」

 逆に本来のスタイルをいっさい見せることなく、【勇者】を圧倒しているのだから凄いことこの上ないだろう。

 だが、【勇者】も黙って敗北を認めるわけにはいかないだろう……握り締めた剣が強く輝いたとき、戦況が大きく動き始める。

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