上 下
1,479 / 2,721
DIY、強者の宴に混ざる

強者の宴 その04

しおりを挟む


 俺も『猫主』も、共にレベルが高い。
 俺のはいろいろと異常だが、『猫主』もそれなりに──魚たちが逃げ出す程度には高い能力値を秘めている。

 猫は隠れるのが上手な生き物だが、釣り竿までは隠すことができない。
 でも、それが趣味なのだからしょうがないのだ……そこは俺も同意見である。

 この世界での釣りは楽しいからな。
 俺の場合、方法さえどうにかすれば釣ることはできる……ただし天然モノでは無い。

 いずれどうにか方法を見つけて、二人で釣りをしようと約束を交わしていた。

「彼とばかり話をするのは寂しいですね。そろそろ、話に混ぜていただけますか?」

 そんな俺たちの会話に入ってくるのは、共に隠し里の兄である『剣矢』。
 彼の言葉を聞いた『猫主』は、そのクリクリとした猫の目でジト目をやりだす。

「おミャえは釣りに興味ないにゃろ」

「そんなことはありませんよ。ええ、そうでしょう?」

「──えっ? えっと……まあ、本人がそう言うならそうなんじゃねぇか?」

 突然話を振られたのは、彼の弟でもう一人の里長である『剥意』。
 しかし、少々戦闘以外への興味が薄く……うん、聞いていなかったようだ。

 それからは二人が激しく揉め、俺と弟で宥めるという時間が過ぎて……いきそうだったので、早めに抜けておく。

 どうやら本気で互いを意識したからか、それに気づいたのは『剥意』だけだった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 それからも挨拶は続いていく……がまあ、いつも通りの面々なので省略していこう。
 パーティーの時間も有限、何よりイベントなどもあるためゆっくりはしていられない。

「『錬金王』たち、『冥王』、『機械皇』、『天死』、『陰陽師』、『白氷』、暗躍街の皆々様、【刀王】、アニストの王族、ドゥーハストの姉妹、『龍王』と【結界王】、【仙王】と『闘仙』……だいぶ挨拶したな」

《先ほど、特級会員たちとの挨拶も済ませておりましたので、旦那様の関係者の中で挨拶が済んでいないのは彼女のみとなります》

「そうだな。さて、どこに居るのやら……と噂をすれば影か」

 彼女の方は俺と違い、この場すべての人に挨拶をしていたようだが……どうやらもう他が居ないのかもしれない。

 近づいてくる彼女に、ふとそんなことを考えていた。

「やあやあ『生者』君、久しぶりだねぇ」

「──『宣教師』さん。ええ、お久しぶりですね」

「央州が最後だったか……うん、君の活躍は聞いているよ。休人でありながら、よくぞそこまでといった感じだね。何度も連絡はしようと思ったけど、いろいろとあってね。この魔道具はまだ使っていないよ」

「お気になさらずとも。連絡が無いのは、その方が元気な証とも言いますし。『宣教師』さん、少しお話しませんか?」

 そんなこんなで、俺たちは語り合う。
 彼女にはちょっと、言いたいこともあったからな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

処理中です...