虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,474 / 2,819
DIY、強者の宴に混ざる

招待状 中篇

しおりを挟む


 そんなこんなで、俺は再び人形を稼働して招待を受けることに決めた。
 この世界だと招待状の使い道は、現実と同様の証明書以外にも存在する。

 まずは証明証の派生版、魔道具として結界突破に使う鍵としての用途。
 特定の魔力が無いと入れない結界、鍵になる波長を招待状に仕込んで送ればいいのだ。

 そしてこちらの世界オリジナル──招待状そのものが、会場への移動手段になる。
 魔法やら魔術を用いて、中に転移術式を刻めばいいだけだ。

 言うは易く行うは難し。
 割と金の掛かる方法なので、貴族でもそうはできない方法(……まあ、王族はできるけども、王城への侵入を考慮してやらない)。

 真に行うことができるのは、ありとあらゆる力を持つ者のみ。
 まさしく富、名声、力……そういったものが必要となるのだ。

「技術的にも、媒介となる素材的にも、そもそもの会場的にも……いろいろと必要な物が多くなるからな」

 ちなみにだが、招かれたパーティーまでは数日あった。
 さすがの『騎士王』も、開始直前で渡すほど落ちぶれてはいなかったようだ。

「悪いが、今回も出番だ。基本的に俺が操縦することになるだろうが、ちゃんとお前が動く時間も用意する」

「──私のことはお構いなどせずとも」

「創造主として、自分で創った物には責任ぐらい取るつもりだ。それに、俺はあまり煌びやかな場所は慣れていなくてな。これからも世話になるついでに、今回で学んできてほしいんだ。頼めるか、『エクリ』?」

 俺が語り掛けるのは、つい先日の生産ギルド会談で製作した特典素材を用いた人形。
 機械に自我を宿す『プログレス』である、『ハートギア』を搭載した特殊な代物だ。

 そのため、カエンのように俺と自然に会話ができている。
 今や自分の身に纏う衣装も、いつの間にやら生産していた。

 エクリと名を与えたその人形は、燕尾服を着込んでいる。
 あのときは無貌だった顔部分も、自分で彫りを入れたようで……美少女になっていた。

 何でも、頭に思い浮かんだ顔なんだとか。
 使った特典素材は人型では無かったはずなのだが、いったいどこからそんな電波を受信したのやら……結構心当たりがあるけど。

「創者様がそう申されるのであれば……」

「そうそう、俺はそう言っている。お前は戦闘用でも、生産用でもない。個を持ち我を示せる一人の従者として、主である俺……そして俺の家族に利益が出るよう動ける存在になることを願っている」

「畏まりました。創者様、そしてご家族様に恥じぬ働きをさせていただきます」

 そうして、彼女は招待状を俺から受け取ることに。
 解析はすでに済ませてある……目的地も、ちゃんと分かっていた。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...