1,424 / 2,820
DIY、お祭りを満喫する
聖獣祭後篇 その14
しおりを挟むとりあえず、逃げる森獣を捕まえるべく俺は罠を張った。
追い込み漁のように道を誘導し、じわじわと攻め立てれば……捕獲成功だ。
『こ、これは……』
「この森には、とある結界が張られていますね。そしてそれは、種族を選別したうえで拒絶することができる。ならば、それを解析したうえで、指定する種族を変更すれば……このように、貴方様だけを捕らえられます」
『…………』
「ようやく、顔を合わせていただけました。あれ以来、お体の調子はどうでしょうか?」
語った通り、結界を構築して捕らえた。
森獣以外は普通に通ることのできる結界なので、被害は存在せず他の守護獣たちもいっさい反応しない。
……もしくは分かっていても、これが俺とこの森獣『緑鹿』の問題だと見て見ぬふりをしてくれているか、だな。
「お久しぶりです、『侵略者』の変以来となりますか? その節は、少々お見苦しいものなどを見せてしまい、申し訳ありません」
『……それはこちらの方こそだ。奴らに蝕まれ、暴れる姿など……』
「お気になさらずとも。それらがすべて、皆さんが勇猛に抗った結果であることはアニストの国民誰もが知っていることです。各分私も、貴方様のお陰であのときにやり遂げられたこともございます」
解析、そしてそもそもの情報収集においてサンプルになったからだ。
割と早い段階で遭遇したからこそ、対処できた部分も大きい。
『……そうか』
「私は──『超越者』が末端、『生者』は感謝しております。貴方の懸命な行いは、私にとってとても価値ある物でした。生に執着した結果、この身となり果てた私にとって……それは紛れもない誇らしい行いなのです」
『…………こちらこそ、詫びさせていただきたい。見せる顔が無いと、これまで逃げ続けた自分を悔やみたい』
「いえ、構いませんよ。もしかしたら、共に恥ずべき点があったかもしれません。ですがもう、それは胸の内に仕舞ってこれからのことを話し合いましょう。私には、貴方に会うもう一つの理由があるのですから」
そう、会って話して終わるわけにはいかないのだ。
許可を、そして加護を貰ってようやくひと段落付ける。
『理解した。ならば、こちらも相応の態度で応えさせてもらおう。『生者』、貴方は何故先へ進まんとするのか』
意識を切り替え、真っすぐにこちらに問いかけてくる緑鹿。
詫びで加護が貰えるほど、世の中は都合よくない。
なればこそ、真剣に答えよう。
その成否はともかく、想いとは曝け出すほど相手に響くものだから。
0
お気に入りに追加
647
あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。
初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。
今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。
誤字脱字等あれば連絡をお願いします。
感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。
おもしろかっただけでも励みになります。
2021/6/27 無事に完結しました。
2021/9/10 後日談の追加開始
2022/2/18 後日談完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる