虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,409 / 2,828
DIY、お祭りを満喫する

聖獣祭中篇 その19

しおりを挟む


 選ばれた者だけが入ることのできる場所。
 森獣たちが周りを守護し、聖獣が直接管理する大森林の中央区。

 そこへ向かうためには、まず資格を集めなければならない。
 それを持って転移陣に乗ることで、中央区の結界を超えて中に入ることができる。

「許可を持つ者の前に、扉は開かれる……前はアレだったけどな」

 俺の中に預けられた許可証が光り輝き、転移陣が呼応した。
 やがて俺の視界が一瞬光に包まれると……そこでは、異なる光景が広がっている。

 俺もかつては足を踏み入れたが、それは少しトラブルが起きている最中だった。
 その時は漂っていた禍々しい霧も、今は綺麗さっぱり無くなっている。

「うん、前回も思ったけど……ここはある意味、モフモフ天国だな」

 周囲の九つの区画を守護するのは、成体になった森獣たちだ。
 では、幼体たちはどうなのか……答えは、中央区で育てられている、である。

 前回も見た多種多様な森獣の幼体たちが、この区画のあちこちで歩き回っていた。
 まあ、これを目的に頑張った非戦闘職なども居るんだろうな。

「ここには、これまでの祭りで優秀な成績を出した屋台が集まっているんだな。事前に報酬を貰った上で、ここに来た者なら誰でも無料のもてなしを受けることができるわけだ。いやー、これなら誰でも喜べるな」

 一部は有料だが、基本的に何かしらは無料でやっているみたいだ。
 武人なら武器の手入れをしてもらっているようだし、料理を食べていたりもする。

 俺もいくつか料理に手を伸ばし、その味について『SEBAS』と話してみたり。
 ずっとこの場所に居てもいい……が、他にもやりたいことがあるからな。

「……結局、どうすればいいんだろうか」

《旦那様はどうされたいのでしょうか?》

「まあ、面倒事になりそうだから避けてはいたけど……うん、そうだな。大人なんだし、ケジメは付けておきたいとは思うぞ」

 五つの許可を得て、俺はここまでやってきたのだが……あえて特定の場所を通らずに、どうにか突破したと言っても過言ではない。

 なのでそれを解消するためには、必ずそこで出会わなければならない──森獣に。

「それに、どうせなら最後までやった方がいいだろう。森獣の加護だけじゃなくて、聖獣の加護も貰ってしまおうか」

 だが、それをするためには中央区に来るためだけではダメなのだ。
 許可九つ、それだけ集めなければ聖獣に会うことはできない。

「中央区以外に八つ、そしてここでもう一つ得ないとダメなんだよな……」

 この無理難題、果たしてどう達成するべきか……うん、今日が終わる前に答えを見つけておこうか。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...