1,399 / 2,733
DIY、お祭りを満喫する
聖獣祭中篇 その09
しおりを挟む森を歩いて魔核個体を見つけ、それが森獣ならアタリだ。
勝負して認められ、なんやかんやで許可が貰えればよかった。
「……あー、たぶん違うなこれ」
『GURRRRR……』
涎ダラダラ、爛々とした目を真っ赤に染め上げた狼型の魔物。
だが、たしかに魔核レーダーが示している個体だった。
「知性が欠けてるな、あれは。あまりにやりすぎだ──しばらくしたら退場だな、彼ら」
そんな狼と相対する三人組。
前衛として剣士が戦い、後衛で魔法使いが詠唱中、その間で弓士が的確に隙と時間を生み出していた。
とはいえ、獣人たちの攻撃にも怯まず狼は猛攻を仕掛け続けている。
やがて魔法使いが詠唱を終えて、思いっきり爆発を……って、不味いな!
「──『溺死の水泡』!」
久しぶりの『死天』謹製アイテム。
本来なら相手を包み、そのまま溺死させるためのものだが……今回はその水を使ってやらなければならないことがある。
ある程度自分の意思で操れる泡沫を、爆発の飛び火で発火した植物に当てていく。
魔力の火も、死の概念を帯びた水の力には敵わず、瞬時に鎮火していった。
「ふぅ、危なかった……あっ」
「「「…………」」」
「……じゃ、そういうことで」
「「「待って(ちなさい)!」」」
さすがに目立ち過ぎたようなので逃げようとしたが、やはり止められてしまった。
仕方なく、渋々といった表情を浮かべて彼らの方へ向かう。
「とりあえず、お助けしましょうか?」
「「「お願いします!」」」
「そうですか。では──行きますよ」
今の俺は『バトルラーニング』の力もあるので、見た感じは武人っぽく戦える。
それでも無駄に爆弾特攻をしていたのは、真面目に戦うと死んでしまうから。
だがまあ、今は非常事態だ。
どうせ死ぬならバカみたいな死に方がいいからとやっていたことだし、彼らを逃がすためなら真面目に戦ってもいいだろう。
「今の内に逃げておいてください」
「えっ、でも……」
「いいから! 死の直前で戻されるといっても、痛いものは痛いですからね」
適当にそう伝えると、彼らは助けを呼びますとかなんとか言って走り去った。
いや、邪魔だから追い出しただけだから呼ばなくても……いや、好都合か?
「なんとなく、この後の展開もテンプレならアレだしな。まあ、ともあれ速く倒しておこうか──『喰獣の剣』」
獣による捕食が持つ死の概念の具現体。
牙状だったそれを改悪し、劣化させて剣として扱えるレベルまで抑え込んだこの武器。
それを向けるだけで、狼は察した。
自分がとんでもない相手を敵にしたと……誤認しただろう。
「今なら何もしません、行きなさい」
『GURRRR……GAU!』
腐っても魔核個体、目の色を赤から黒に戻す(?)と、森の奥へ帰っていった。
まあ、切れたから暴れていただけで、誤解が解ければこうなるわけだ。
……さて、あとは彼らを待つだけだな。
0
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる