上 下
1,396 / 2,795
DIY、お祭りを満喫する

聖獣祭中篇 その06

しおりを挟む


 さて、どうにか森亀を起こすことに成功したのだが……いったい何をすれば許可が貰えるのか。

 それを試練と称して聞いてみたが──

『特にないよー。うーん──ほいっと、これで許可が出たんじゃないの?』

 とのこと。
 まさかの一瞬で、俺は四つ目の資格を手にすることができた……なんだろうか、この虚脱感は。

『そうだー。加護が欲しいなら、何か面白い物が欲しいなー。特に決まりはないけどー、何か無いかなー?』

「……少々お待ちください、少し考えてみましょう」

 話の流れで加護云々にも触れられたが、面白い物と言われてもすぐには浮かばない。
 ここで『プログレス』を渡すのは即効性が無いだろうし、他に何か……あれがいいか。

「──こちらなど、いかがでしょうか?」

『ふわー、温かいねー』

「人工太陽を目指して創ってみたのですが、さして使い道が見つからず……せいぜいが日光浴をいつでも行えるというものにしかならなかった一品です」

 ふわりと浮かべた小さな球体が、高熱と光素を周囲に発している。
 稀に使う『ソルロン』チャージ用に試作してみたが、あちらには使えなかったのだ。

 なので今回、そんな不良在庫を押し付けてみることに。
 ……ちなみに登録すれば念じて使えるようにしてあるので、大型な貴方も問題なし!

『うーん……まあ、これでいいよー。よーしそれじゃあ、加護をあげちゃうよー』

「ありがとうございます、森獣様」

『加護の効果はー、お日様の光があるならー寝るだけでいろいろとー回復しやすくなるってものだよー。大事に使ってねー』

「……なかなかに強力な効果ですね」

 いろいろ回復、ここが肝だろう。
 すぐに[ステータス]を確認してみたが、そちらにも説明通りのテキストが記載されている……解釈の幅が広いんだよな。

《通常の身力値の回復速度向上だけでなく、状態異常の回復なども含まれるのであれば、ポーションが不要となりますね》

「寝るにしても、それを短時間にできるなら集団でボスに挑むときに役立てるだろう。この加護、本当に凄いよな」

 陽光がある場所に限られるものの、回復を自前かつノーコストで行えるのは便利だ。
 ポーションだと起き得るであろう中毒症状も、寝るだけならば意識しなくていい。

 また、寝て治った直後に起こしてもらえれば、効率的に戦闘も可能だろう。
 その時間が短ければ短いほど、継続的な戦闘を畳みかけることもできる。

「ありがとうございます。このお礼は、またいずれいたします」

『ううん、気にしなくていいよー。それじゃあまた寝るからー……おやすみー』

 そうして森亀は俺に加護を授け、再び地面に潜って眠りに着いた。
 残ったのはこれまでと変わらない光景、そして加護を得た俺だけ。

 ……不思議体験をしたとか言っても、全然おかしくないなこれ。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...