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DIY、騒動に混ざる
龍王談(01)
しおりを挟む竜族たちが隠れ潜み、悠久の時を過ごしてきた隠れ里。
異なる位相──亜空間に存在するこの場所は、現在新たな変化を受け入れている。
「あ奴は停滞した状況を変化し得る薬じゃ。じゃが同時に、既存の常識を打開する劇物にもなり得る。今後『超越者』として、どのように関わっていくか……それもまた、お主次第であるぞ」
「はい、心得ておりますお爺様」
先ほど去った『生者』──ツクルの居た場所を見ながら話す祖父と孫娘。
共に【結界王】と『龍王』として、この隠れ里でも上位の力を持つ者たち。
彼らは知っている、『生者』という存在がもたらす影響力を。
それは良くも悪くも、通った場所に変革を促していくと。
「お爺様、どうして今回彼をこの地に招いたのでしょうか?」
「ふむ……まあ、もう話してもいいじゃろうか。あ奴には『超越者』にも休人たちにも備わっておらん、特別なナニカがある。それこそ、神々に愛されていると言っても過言ではないほどのな」
「……そう、なのですか? わたしの眼には何も……」
「どれだけ本質を視ようと、竜の眼だけでは見抜けぬよ。現にお主は、あ奴のステータスが分かっておらぬ」
ツクルは自身の[ステータス]を徹底的に隠蔽しているため、その情報を真に把握しているのは極少数だ。
そしてその中に、二人は含まれていない。
だが分からないからこそ、分かることがある……そう【結界王】は確信していた。
「あ奴はのう、彼の世界においてもっとも影響力のある存在じゃ」
「それはたしか、『騎士王』様だとお伺いしていましたが……それほどの力が、『生者』さんには?」
「肯定もできるし否定もする。奴自身は非力で、間違いなく赤子にすら殺される。じゃが死なぬ、そして必ず生き延びる。『生者』という存在において、もっとも厄介な点はそこなんじゃよ」
「生きることがですか?」
表面上は理解している、そんな孫娘の顔を見て説明を続ける【結界王】。
知っておかねば、今後の世界で優位に立てなくなると分かっているから。
「率先的に動く者、世界にその名を広めようとする者、どういった存在であれ行いには必ず死が寄り添う。力無き者は声無き声を挙げ続け、届かせることなく死を迎える……じゃが、『生者』だけは例外じゃ」
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「死ねばこの世界から去る者たちの声を、いつまでも覚えている必要は無かろう。ゆえに『生者』だけなのじゃ、すべての者に等しく声を届かせることができるのは」
「……それほどまで、なのですね」
そして、【結界王】はこれから起き得るであろう未来を、仮定として話す。
だがそれは過程のようなもの、危惧しようとも未来は動き続けるものなのだ。
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