虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,361 / 2,853
DIY、騒動に混ざる

竜の里 その12

しおりを挟む


 これまで見た中で、『龍王』の使う結界がもっとも強度を持つ硬さを有していた。
 あの『侵略者』の侵蝕攻撃に関しても、そして『騎士王』の攻撃をも凌げている。

 ……まあ、後者に関しては当人が手を抜いていたというのもあるけど。

 今回の俺のように、何らかの方法で結界の強度を弱めないと砕けない。
 そんな結界の恐ろしいところは……構築にいっさい権能が関わっていない点だ。

「ほっほっほっ。よもや、自慢の結界が砕けるとは思わなんだ」

「……これだけやって、ギリギリですが」

「そう卑下することじゃない。永い時間、緻密な操作、そういった事を重ねた結果至った結界じゃ……お主のお陰で、より高みへと至りし結界じゃ──もう一枚味わうがよい」

《強度向上を確認。しかし、これは……》

 俺が砕いた結界の奥に、まだ結界を用意していた『龍王』。
 そして、結界は再び構築される……話によれば、先ほど程の強度は無いはずだが。

 どうやら『SEBAS』によると、そうではないらしい。
 ということは、その後に告げた更なる高み的な発言が関わっているのか。

「……今のご職業は?」

「竜の里族長衆相談役……といった冗談が効きたいわけのではないのじゃろう? 今の儂は──【結界王】へ至ったよ」

「なるほど、それで瞬間的リソースにも変化が生じたわけですね」

 まあ、名前の通り結界使いの王様として、技術や能力が向上したのだろう。
 おそらく才覚とかそういうものではなく、純粋な技量と膨大な年月で至ったんだな。

 俺がやったのは、それをほんの少しだけ加速させただけ。
 そしてその力をこれまで伏せて、戦っていたということは──本気を出したらヤバい。

「なるほど。では、ここからが本番ということで──『ヘビーウェポン』」

 グローブに掛かる質量が増し、実質的な威力向上を図る。
 重力操作を機能として最初から組み込んでいるので、動かしづらくなることは無い。

 最適化された『拳王』の動きを使って、再び結界を砕き始める。
 先ほどの破壊で強化補正が上がったので、速度などや威力がどんどん上がっていく。

 気持ちよく連撃を……と思っていたが、体が突然動きを切り替えて回避を行う。
 死亡レーダーとリンクしているので、気づけたのもあるが……俺は認識できなかった。

 それは突然、空間を切り裂いた。
 不可視の刃、魔力を自力で視覚化できない俺にとってはそれはそういった概念になる。

 いつ行われたかは不明。
 しかし、事実として俺の体が在った場所から斜線上にナニカが通って切り裂いていく現象を捉えられた。

「結界を斬撃に……でしょうか?」

「今の儂ならばできることじゃよ……さて、いつまで持つのやら」

 死なないという一点に限れば、俺が終わることは絶対に無い。
 そう思いたいが……この自信、もしかしたら何かあるのかもな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

処理中です...