虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,348 / 2,827
DIY、騒動に混ざる

大量発生後日談 その09

しおりを挟む


「──『生者』、それが何なのか理解しているのか?」

 会話に介入してきたのは、武闘派仙人である『闘仙』さん。
 俺が渡したクッション型のアイテムは、そうせざるを得ない代物だったんだよな。

「ええ、いちおうではありますが。ただ、あくまで概要のみで、どういった用い方をしていたかまでは分かりませんが」

「そうか……良いか、ワン。これは過去、仙郷より失われた遺物──『登仙の繭衣』だ」

「へぇー、そんなに凄い物だったの? 善く持ってきたね、『生者』」

「まったくだ。これは一定期間包まり続けることで、【羽化登仙】というスキルを発現させる代物だ。発現者は仙丹を翼と化し、自在に空を飛べるようになる」

 まあ、この辺りはアイテムのテキストを読めばなんとなく分かる。
 自然エネルギーさえあれば、それを推進力にどこまでも行けるんだとさ。

「でも、飛ぶだけならそれが無くてもできるよね?」

「もちろん、才ある者が行えばな。だが、これは仙人であれば誰であろうと、そのスキルの習得が可能となる。使い方を誤れば、邪道にも通ずる……それが危惧されたからこそ、失われたとされているのだがな」

「それでしたら、こちらで加工しましょう。使用条件をいくつか定め、邪な者たちが悪用しないように」

「……そうするしかないか。先代とも、その条件は確認させてもらうぞ」

 誰が知っているかと思えば、迷宮の主でもあるかつての【仙王】か。
 まあ、いつの時代を生きているか分からなかったが……だいぶ前みたいだな。

「何よりこれは、【天仙】へ至る道の過程に必要不可欠なスキルでもある。失われた彼の職業も、この繭があればいずれ誰かが発現するだろうな」

「私は生産に関するモノ以外は適性が皆無ですし、【仙王】様はすでに仙人としての最上級職に就いておられますよね? もしや、ご自身で?」

「前提となる条件を満たしていないため、不可能だ。俺は【高位符術士】が限界だった」

「私としては、それでも立派なご職業だと思いますけどね」

 通常の方法で仙術を用いることのできない『闘仙』だが、媒介を通すことでいちおう自在に仙術を使うことができる。

 俺もその恩恵にはあやかっているし、これからもぜひ頑張ってもらいたい。
 ……ちなみに【符術士】だけだと術は籠められないので、【仙王】が籠めているぞ。

「では、私はこれにて。今回はそちらの品をお届けに来たことが目的ですので」

「待て、少し鍛錬をしよう。今ならば、もう少し技術を叩き込んでも大丈夫だろう」

「……そうですね。『プログレス』にもいくつか学習した技術がございますので。そちらの方を、観ていただけると」

 なんてこともあり、『闘仙』から新たな技の指導を受けた。
 ……仙丹有りとはいえ、どうして神の技を模倣した動きについてこれたんだろうか。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

処理中です...