虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、騒動に混ざる

大量発生イベント その20

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 決勝戦は剣士同士の闘い。
 指輪型のスライムアイテムなショウに対して、対戦相手の男はスライムコーティングをした剣を持ってきた。

「なんか、ズルくないか? あれって、普通に使っているヤツだよな?」

「……まあ、グレーだとは思うぞ。しかしまあ、これが初めての試みだから止めづらいってのもあるんだろうな。コーティングした剣はアレ一本なんだろうし、ルールで使えないようにできていなかったのも事実だし」

「次にやるときは、ちゃんと考えてもらいたいけどな……いずれにせよ、ショウが勝つから別にいいんだけど」

 試合が始まり、ショウと男が激しい剣戟を繰り広げ始める。
 剣をぶつけ、言葉を交わし、だんだんその速度は加速していく。

 何やら最初に話をしていたし、あの生産者絡みのトラブルがあったのだろう。
 だからこそショウは熱くなっているし、相手の男も容赦なく攻撃を続けている。

「ショウの『プログレス』は魂型、対する男は……『メタルスケルトン』っていう骨格換装型の『プログレス』だ。肉体内部にある以上、これも排除不可だよな」

「……本当に、ゴリゴリでルールの隙を突いたやり口だな。まあ、それだけ価値のある子なんだって話だろ。あのショウ君が見つけた子なんだぜ? あのルリの息子の」

「…………そう言われると、物凄い感じがするよな」

 なんて会話をしている間も、二人は戦い状況は刻一刻と変化していく。
 最初は互角レベルだったのだが、少しずつショウが押していったのだ。

 そりゃあレベルが固定され、能力値も低下している現状。
 仕込んだ『プログレス』で強化すれば有利だろうが、それも初期補正でしかない。

 ショウはそういったシステム上の力に頼らない、素の力も磨いている。
 最低限、目と動かす体に魔力などを籠めているらしいが……それでも充分だろう。

「剣を比べても能力値を比べても、たしかにショウは劣っている。職業能力も、性格からいって使わないはずだ……だが、それでも強くいられるようにショウは鍛えているんだ」

「おっ、剣が弾かれた……なんかカッコいい終わり方だな」

 首にスッと剣を向けると、男は降参する。
 剣の方も罅が入っており、同じくしてショウの剣が砕け散った。

 それでもスライムコーティングが剥がれた男の敗北となり、ショウは優勝する。
 ……うんうん、女の子と何やら盛り上がっているみたいだな。

「それで、お前はどうするんだ?」

「……そうだな、とりあえず赤飯を炊こうとするルリを止めてくるよ」

「そりゃあ……うん、さっさと行ってこい」

 そんなこんなで、今回のイベントは幕を閉じるのだった。
 だが、結果発表などはまだ先なので……集計結果に期待しよう。

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