上 下
1,304 / 2,733
DIY、目的探しの旅

目的探し その08

しおりを挟む


「『アイアンゴーレム』、まあ初期の相手としては最適な相手だよな」

 ソロでの討伐はレベルが30もあれば可能だし、パーティーで挑めばより簡単だろう。
 加えて、ドロップ品には高品質な鉄鉱石が出て、武器の強化にも繋がるんだとか。

 なので初期の内に乱獲されており、いくつかの攻略パターンが確立されている。
 そうして初心者もより低いレベルで攻略をし、どんどん先のエリアへ進んでいく。

 別に無視しても俺みたいに先のエリアには行けるが、それが問題になることもある。
 休人限定のクエストとか、イベントに特定エリアの突破が条件になることがあるのだ。

「さて、倒すとしますか……」

『…………!』

「今じゃ『プログレス』も使えるようになって、初心者たちの討伐可能レベルが思いっきり下がったからな。討伐されすぎて、気が滅入っているのかもな」

 両腕を掲げる鋼鉄の巨大人形を見て、ふとそんなことを思う。
 そしてその腕を地面に叩き付け、大地を激しく揺らす。

 これは初期行動であって、初期行動ではない……正確には、何度も討伐された後から実装された行動パターンだ。

 EHOに登場するエリアボスは、嵌め技などがあると少しずつ学習する。
 最初の内は効いていても、次第に効果が失われていくのだ。

 昔はスロースターターというか、ボスの余裕というか……まあ、休人のレベルもまだ低めだったので、少しだけ戦闘開始までに時間があった。

 だが休人が強くなり、そんな時間も不要と判断されたのだろう。
 というか、その間に部位破壊が行われることが多かったそうだ。

「今じゃすぐにスタートだよ……まあ、それでも『プログレス』の多様性には、まだ対応できていないみたいだけど」

 さすがにボスを相手に、丈夫な剣一本だけというのは無理である。
 壊れるまでは起動を維持できるので、そのまま剣を構えて戦闘を開始した。

「──『スピードスター』起動」

 靴型の『プログレス』が足を覆い、俺の移動速度を高める。
 職業スキルの中から【見習い走者】が持つ加速スキルを使い、一気に駆け抜けた。

「速攻で悪いな──『リビングドール』」

 かつて『白氷』に渡した『プログレス』の片割れ、無機物を操る能力。
 そして、ゴーレムは無機物……対策ができていない今なら、これも通用する。

 操縦権を得たので、すぐにゴーレムに自虐行為を始めさせた。
 自分で自分の体に傷つけさせるなら、俺の攻撃力は関係ないからな。

「失敗したら別の方法もあったけど、一発で成功してよかったよかった。さて……時間は掛かるが操縦に専念しないとな」

 ボスは一定以下まで生命力が減ると、暴走モードに入る。
 そこまで行っても、『リビングドール』は解除されない──これで勝利は確定だ。

 ……そうして地味な闘いを繰り広げた後、俺は次のエリアへようやく迎えたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...