1,301 / 2,829
DIY、目的探しの旅
目的探し その05
しおりを挟む「……なんで消えねぇ?」
まあ、アレから何度も俺を殺そうとした後の台詞である。
アイテムがいっさいドロップしないこともあって、少しずつ疑っていたようだな。
彼の反応と周囲の気配を探っていたが、その時間潰しも充分だろう。
死体蹴りをして満足している彼に、こそこそと仕込みを行う。
「──“ベストペスト”」
とある休人が得た、最悪の能力。
名前は『最高の黒死病』だが、本当に使いどころを考えなければならない。
現状では針型の『プログレス』を、相手に刺すことでしか発動しない仕様だ。
しかも投擲などは不可能で、直接近づいて刺さないといけない。
「痛ッ……テメェ、何しやがった!」
「さて、何をしたんでしょうね。それより、私を殺さなくていいんでしょうか? お友達とご相談していただいても、構いませんよ」
「クソッ。おい、コイツどうする!?」
俺を殺せない、そのうえ自分たちのことを知られている。
それゆえに彼は、ただ放置するという選択肢を取れなくなってしまった。
だから彼は仲間と合流する。
そしてそれは、俺が狙っていた行動だ。
「──“グッドラック”」
続いて起動させた『プログレス』は、毒や薬の改良を行う能力。
それを先ほどの“ベストペスト”に使い、空気感染やその対象を弄る。
……そうじゃないと、また同じ目に遭いそうだからな。
それでも使ったのは、彼らに俺を狙った贖いをしてもらいたかったからだ。
「なあ、エイトさん。アンタいったい、俺たちの仲間に何をしたんだ?」
「……さっき、ハッサムさんに感染菌を打ち込みました。感染条件は、彼とパーティーを組んでいる状態にあること。休人にしか感染しませんし、死に戻りしたら解消されます。はてさて、どうされますか?」
『っ……!』
「ちなみにポーションは飲んでも無駄です。こちらの方で、全員に感染菌が潜伏したことが確認できました。たとえ同時に飲んでも、皆さん同士で感染は巡ります。ちなみに、私が死んでも止まりませんよ」
少しずつふらつき始めるPK集団。
状態異常としては『発熱』や『頭痛』という現実のものから、『魔力阻害』や『放命』というファンタジーなものまで存在する。
黒死病の症状に加え、この世界に合わせた症状が発病する。
最高で最悪な病を生み出すことができる、それが発現者の望んだ能力だったのだ。
「て、テメェ……」
「私は貴方がたに恨みがあるわけではありませんので、この程度にしておきます。これに懲りて、『プログレス』ぐらいは警戒するようにした方がいいですよ」
PK行為すべてを批判する立場に、もう俺は立っていない。
彼らの行動もまた、『プログレス』を発展させる礎になっているのだから。
PK、PKK、そして被害者……彼らの存在が新たな可能性を生み出す。
それを願っている俺に、PKを止めろという資格などありはしない。
0
お気に入りに追加
647
あなたにおすすめの小説

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~
かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。
望んで召喚などしたわけでもない。
ただ、落ちただけ。
異世界から落ちて来た落ち人。
それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。
望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。
だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど……
中に男が混じっている!?
帰りたいと、それだけを望む者も居る。
護衛騎士という名の監視もつけられて……
でも、私はもう大切な人は作らない。
どうせ、無くしてしまうのだから。
異世界に落ちた五人。
五人が五人共、色々な思わくもあり……
だけれど、私はただ流れに流され……

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる