上 下
1,293 / 2,733
DIY、目的探しの旅

生産勇者 後篇

しおりを挟む


「:DIY:に固執していたら、使えなかっただろうな……よし、追加分も出来上がりだ」

 検証でかなりのアイテムを消費したので、新たに作り直す。
 一度に大量に作ることで、大量生産ボーナスなんかを受けて高品質にできていた。

 すべて自分の力で製作したので、ちゃんと【生産勇者】の能力対象に指定できる。
 武器から回復アイテムまで、その対象は多岐に渡る……それでも、自分で作った。

「起動させなくても万能生産スキルとして、どんなアイテムでも作れる効果が無かったらできなかっただろうけど……まあ、ともあれ最低限は準備ができたな」

《はい、さすがは旦那様です》

「本当なら、『死天』アイテムも加工出来たらよかったんだけどな……劣化加工ならともかく、強化の方はまだ無理だったか。そういえば、まだ試したことが無かったっけ」

 生産職は粗方カンストしているが、それでも現状の職業スキルだけでは『死天』が死因から生みだしたアイテムを加工できない。

 例外は:DIY:を使ったときのみ。
 創造神の御業をごく一部、俺でも使える範囲で押し込めた能力だからこそ、運営関連の代物でも手を加えることができるのだろう。

「……ふぅ。ともあれ、これにて検証は終了だ。あとは報告しておくか。【勇者】も見抜けたぐらいだから、多分会っただけで気づかれるだろうし」

《では、いつもの準備をいたしましょう》

「ああ……なんとかして出し抜けないかな」

 今回作ったアイテムの中には、それが可能かもしれない物も用意してある。
 だが、それでも難しいかもしれない……相手は本当、理不尽の権化だからな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 冒険世界 始まりの街

「──【勇者】を新たな道……いや、異なる変化を遂げさせたようだな。『生者』、いったいどのような力なのか?」

「さて、たまには当ててみたらどうだ? ほら、こういうヒントも用意してある。クイズスタートだぞ、『騎士王』様」

「! そ、それは……脅しのつもりか」

「さて、何のことかさっぱりだよ。それよりもこれ、とっても使い易そうだろう?」

 そういって、ゆっくりと指を動かそうとすると……物凄い勢いで動く。
 だが俺も負けじと、今回製作したアイテムで対応する。

 障壁を展開する魔道具に、魔力を追加で供給して“自産直装”を発動。
 通常よりも性能を上げた障壁画、彼女の突進を防……げなかった。

 まあ、今はまだ1,1倍でしかないので、もともと突破されていた障壁じゃ守れない。
 だがそれでも、それはちゃんとヒントになる……少しだけ『騎士王』が冷静になった。

「……ほんの僅かだが、これまでの物よりも抵抗が強かったな。術式の変化というわけではないだろう、それが能力か?」

「察しが良すぎるだろう。まあ、正解だ」

「そ、そうか……ならば、そろそろそれをこちらに渡してもらっても──」

「いやいや、そうはいかない。ちゃんと答えに辿り着いたわけじゃないからな……というわけで時間切れ、ポチっとな」

 あっ、という声は一瞬で掻き消える。
 今回はその思考の分、対応するための時間が足りなかったな……ちゃんと予定は聞いている、だからこその強制送還であった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

処理中です...