虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,249 / 2,813
DIY、一先ず配達終了

ラグナロク その04

しおりを挟む


 そして、さっそく始まったラグナロク。
 至る所で繰り広げられる闘争を、ボーっと眺めている俺。

 かつてここで戦った神の狼や蛇など、そういった巨大生物もこの場に居る。
 要するに神話に出ていれば、何でもかんでも出てきているのが現状だ。

 ヴァルハラに来た際に戦った守護獣も、実はヴァルハラチームに居るからな。

「『SEBAS』、ドローンを展開しろ」

《畏まりました》

「攻撃、防御の支援は無しだが、回復や補助の支援だけはやっておいてくれ。俺は例の縛りがあるが、他は蘇生OKみたいだし」

《仰せの通りに》

 アインヒルドは現在、俺の下から離れて仲間の戦乙女たちと共に戦っている。
 彼女が死ぬと俺も退場なのだが、それは問題がないという判断をした。

 なのでドローンを飛ばして、ヴァルハラからの参加者たちの支援を行う。
 ……脳筋たちが望まない支援は最初からゼロ、継続戦闘に関する支援のみを実行する。

「さて、俺も行くか──[アライバー]」

 名を呼べば、『SEBAS』が空気を読んで用意してくれた。
 外装型、一人を除いて女性にしか使えないアレみたいな感じの機体に乗り込む。

「北欧神話に機械はあんまり無いからな……さて、やりたい放題しますか」

 体を動かせば、俺の意思を読み取ってその補助を行ってくれた。
 そして機体が得た外部の感触は、そのまま俺にフィードバックされる。

 その手の先に握り締めた二本の剣を、俺もまた握り締める感触を覚えつつ振るう。
 相手をするのはこの舞台を大きく占領する巨大な蛇──世界蛇のヨルムンガンド。

「膨らめ[虚膨]、どこまでも」

 武具のストックは生産職として当たり前。
 かつて剣関係の職業レベリングに用いた星剣を、[アライバー]に装備させていた。

 最初から魔力を籠めて膨らませていたが、その性質である膨張をさらに高める。
 ドローンからの魔力供給を受け、普段よりもその大きさは異常なモノへ。

「──ハハッ、ここまでしないと無理か。普通なら、重くて持てないぞ。けど、これならアレが言えるか」

 星剣[虚膨]には重さがない。
 しかし質量はあるという、ファンタジー満載なチート武器だ。

 お陰でATK、というか筋力が皆無な俺でも使うことができる。
 そして、現在その大きさは──

「──約束されし月券利の剣工クスカリバー!」

 なんて叫ぶ程度に、膨らんでいた。
 しかも二刀流、それをそのまま世界蛇に向けて勢いよく振り下ろす。

「……ふぅ、前回は潜り込まないと勝てない相手だったのに、真面目に挑んで勝ったって気がするな」

《お疲れ様です》

「大型相手だと、神話でも殺されている奴が居るからな。英霊が挑んでも、難しいだろうし……さて、次に行こう」

 アインヒルドがピンチになるまでは、俺も自由にしていいだろう。
 そして彼女は強い……信じて待とう、そのときが訪れるまで。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

処理中です...