1,195 / 2,853
DIY、三つの街
霊子変換室 その10
しおりを挟む闇厄街
あれから霊子変換室の掌握を済ませ、一時的に侵入を抑えることに成功した。
それも完全では無いのだが、転移などによる侵入は不可能だろう。
「──皆さん、ご無事ですか?」
「おおっ、君か。『生者』、内部での防衛は成功したのだな?」
「ええ、皆さんのお陰ですね。しばらくは、大丈夫かと──“ミラクルハンド”」
予めインストールしていた『プログレス』が起動し、その能力が発動する。
魔力に干渉できる半透明な大男サイズの腕が生まれ、休人たちの首を絞めていく。
本来は攻撃力×魔力で性能を高めるというもので、首を圧し折ることもできる。
今の俺は職業スキルの補正を受けているため、攻撃力も1以上あるんだぞ。
「助かった。しかし……どうやって判別しているのだ?」
「『プログレス』があれば、識別可能となりますよ。あまりおすすめしませんが……こういった場合は、付けておいた方がいいかもしれませんね」
「なるほど……これは休人と同じことができるというが、そういったことまで」
「便利ですよね。決して、彼らだけが独占していい物ではございません」
何でも保存できる[ストレージ]。
これを持っているだけでも、輸送業という形で休人は食っていける。
こちらの人々が空間魔法やそれ系統のスキルを発現する可能性は低く、また魔道具として手に入れるのは大半が金持ちだ。
しがない商人は彼らに依頼し、輸送してもらうしかない。
……たとえ一部をパクられるかもしれないと、そういった覚悟が必要だとしても。
「しかし、これからどうするつもりだ? 今回は凌いだが、奴らは不死身。再びこの地を狙ってくるだろう」
「一時的に封鎖をしましたので、一日ほどは安全です。私を含め、入ることはできませんのでその間に動くべきです」
「……それはつまり、実力行使をしろということか?」
「どう捉えてくださっても構いませんよ。数は必要ありません、今回の依頼に失敗した以上相手も動かざるを得ません」
さすがに前回同様、支配領域まで殴り込みに行く必要はない。
しかし相手──つまり【情報王】も、今回の失敗で痛手を負っている。
依頼は気前の良さを見せたかったのか、失敗すれば損するようにできていた。
もともと休人からは根こそぎ奪っていたのだし、そこに関しては何も困らない。
だが、霊子変換室よりも先に関する情報がいっさい無いというのが問題なのだ。
情報があればあるほど強くなる【情報王】だが、ある程度条件が課せられている。
「不完全な文献であればともかく、彼らに渡していた『プログレス』の眼を送られてしまえばお仕舞です。その前に、どうにかしないといけません」
「長期戦になるか?」
「いえ、いっそのことこちらから打って出ることにしましょう。それに乗るも反るも、彼ら次第ということで」
少し前に似たようなことをやっているし、その要領でやればいい。
……さぁ、宣伝を始めようか。
10
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる