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DIY、新たな理と共に
プログレス配布前篇 その07
しおりを挟む「──移植しても良かったのだぞ?」
「『錬金王』さん、ユリルさんの前でも同じことがまだ言えますか?」
「師匠……」
「分かった分かった。今は大人しくする、だからその目を止めろ……分かった、今はではなく、『生者』がそれを要求するまでだ!」
どうしても『プログレス』を埋め込みたいのか、諦めない『錬金王』だったが……弟子であり、娘であるユリルには弱かった。
しかしながら、最後の最後で俺に押し付けてきたな。
ほら、ユリルが笑っていない目で脅してくるじゃないですか。
「しかし……すぐに目覚めないのか? 前に作った時飛ばしの秘薬もあるのだが?」
「ダメですよ。肉体の時間ではなく、世界の時間も同時に経過させなければ。定着まで、私もここで生産活動に勤しむ予定ですし。その間、『プログレス』用の魔石の用意や自身の理想をイメージするのがオススメです」
「前半はともかく、後半はどうなんだ? たしか、魂から読み込むのだから表層の意思は対して関係ないのだろう?」
説明書に読んで、『錬金王』が理解した通りの仕様となっている『プログレス』。
いちいち自分のイメージで形が変わるように、『プログレス』は設計していない。
あくまでベースは本人の在り方を基に形成する──これが初期形態だ。
そこに魔石を盛っていくことで、自分なりのアレンジを加えるのが『プログレス』。
初期以降の『プログレス』は、ある程度本人に合わせた進化を行っていく。
そのときに必要なモノを補ったり、今ある力を高めたり……その変化は多岐に渡るが。
「寝るのが特に大切ですかね。普段は意識できない領域まで潜れますし、運が良ければ深層領域で『プログレス』形成に立ち会えるという実験結果も──」
「では、私はこれで。ユリル、『生者』の世話は任せたぞ!」
「は、はい! ……なんだか、すみません」
「いえ、誘導したのは私ですので」
寝た方がいいと言えば、寝るんだろうなぁと思ってはいた。
……見た目は完全に幼女だし、育つイメージが尋常ではない。
「ありがとうございます、『生者』さん。師匠に、権能とは違う力を授けてくれて」
「いえいえ、こちらの事情に巻き込んでしまい申し訳ない限りですよ」
「『錬金王』は……師匠の代わりは私では務まりません。ですが、すでに権能は私の下にあります。いろんなものを授けてくれた師匠ですが、私から何かを返すことはできませんでした」
「……では、今回の話は最適だったと?」
そう尋ねると、ユリルはコクリと頷く。
権能は本来、独りしか使えない……事情があったとはいえ、一度継承したため、ユリルが権能を返すことはできない。
「師匠だけの力、かつての師匠とは異なる道が見えてきます。私は『錬金王』として、師匠のように新たな道を切り開きます……だから、感謝しているんです」
「そうですか。では、明日が楽しみですね。おそらく私も、ユリルさんも予想していないことが起きますよ」
「?」
彼女が『錬金王』を大切にしているのと同じくらい、『錬金王』もまた彼女を大切にしている……そのパーソナリティーが読み込まれるのだ、イイことが起こるだろうな。
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