虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

DIY、新たな理と共に

プログレス 中篇

　プログレスに関する情報が、［ヘルプ］機能に新しく記載されていた。
　こういった部分も取引の結果で、チュートリアルを行えば魔石も与えられる。

　そしてそれは、休人もこの世界の人々も分け隔てなく身に着けられる。
　むしろ、休人よりもこちらの世界の人々の方が、その恩恵にあやかることだろう。

「そういえば、タクマに言われたっけ？　こういうのって、休人だけの特権みたいなシステムにしないのかって」

《旦那様は、どのようにお答えをされたのでしょうか？》

　現実のことなので、『ＳＥＢＡＳ』も把握していないことだ。
　まあ、創作物とかでは、休人だけのシステムとかは多いからな。

「そりゃあ、サンプルは多い方がいいって答えておいたよ」

《なるほど……旦那様らしいご回答ですね》

「……なんだよ」

《いえ。こちらの人々のことを考えられた、とても良い回答だったかと》

　同じようなことをタクマにも言われてしまい、似たような態度を取ったものだ。
　単純にプログレスのデータがたくさん欲しいというのも、嘘ではないんだけどな……。

「…………まあ、一方的な戦力強化もどうかと思うからな。シナジー的に全員が強くならないし、『騎士王』みたいな規格外はそもそも使えないからな・・・・・・・」

　俺が家族に告げた、俺自身のプログレスが存在しない理由はそれである。
　権能持ち、要するに『超越者』はプログレスへのアクセスが不可能なのだ。

　自分だけになんて考えると、『超越者』の誰かが使えそうなので完全に封じてある。
　そのため管理者権限で他者のプログレスを使う、その妥協点で収まっていた。

「さすがにアイツらに渡すのはな。鬼に金棒というか、魔王に滅亡許可証ぐらいのヤバさだからな。……【魔王】には渡すけどさ。隠しても無駄そうだし、魔族にも対等な存在で居たいからな」

　物語なら特殊な力は主人公たちだけの特権だし、敵には敵で、敵にしか使えないような能力があったりする。

　しかし、プログレスに類似する技術はまだ開発されていない。
　魔族側だけが圧倒的不利な状況なのは、あまり平等ではないだろう。

　すでにプログレスの情報は【魔王】に送り届けてあるし、【魔王】にしかできない方法で魔族たちには移植してもらっている。

　……ちなみに魔物には使えない。
　そこまでやるとさすがに【魔王】軍が有利になり過ぎるし、もともと魔物には強くなるシステムがあるので不要だったからな。

　だが不可能ではない。
　それゆえに、向こう側からのそれらに関する提案や質問が出てくるだろう。

「そうだ、もう一度お礼のお祈りに行っておこうか」

《それはとても良い考えですね》

「だろう？　いろいろと創ったし、その出来も見てもらいたいからな」

　創造神様だけでなく、他の神々にもいろいろと捧げておきましょうか。
　祝福をくれた相手だし、なかなか無碍にはできないんだよな。