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DIY、新たな理と共に
プログレス 前篇
しおりを挟む──EHOに新システムが発表された。
自分と共に成長し、育成方法も自分次第。
その果ては決まっておらず、育てた分だけ強くなる──『プログレス』。
先日のマラソンイベントの映像、そして運営が用意した説明映像で紹介される。
……まあ、それは俺が『SEBAS』と共に予め作っておいたんだけど。
「ねぇ見て、翔が映っているわ!」
「ああ、やっぱりすぐに分かったな! 俺たちの子だ、なんかこう……輝いている!」
「ええ、ええ、まったくだわ!」
「父さん……母さんも……」
翔が何か言っている気もするが、映像に集中している俺たちの耳には入ってこない。
公式サイトで出された映像を、我が家のモニターで観戦中である。
現在は翔が勇者っぽいオーラを纏い、鋭い斬撃を放っているところだ。
それを受けたメカドラが吹っ飛び、ゴールに向かう道が開かれる。
「そういえば、父さん。あれって、父さんが用意した物なんだよね? あのときは全然分からなかったけど、ゆっくり考えるとできるの父さんしかいないじゃん」
「ん? ああ、そうだぞ。武器にも龍にも乗り物にもなる、便利な奴だ」
「……よく壊れなかったね。俺の剣技、今だと大体の物は斬れるんだけど」
「まあ、強力な一撃でも壊れないように改装は続けていたからな」
なんせ『騎士王』と知り合いなんだ。
いつかヤバい攻撃を喰らうことになったとき、一撃だけでも耐えられるように頑張って改造している。
「ちなみにプログレスの使い勝手はどうなんだ? 本当は完全版を渡したかったが、アレは危険だって怒られたからな……不満とか、あったら言ってくれよ?」
「あれに不満なんて……凄いんだよ!」
翔が熱く自分の能力を語ってくれるが、先に『SEBAS』が解析して把握してしまっているため一歩引いた反応になってしまう。
代わりに瑠璃が察してくれたのか対応してくれているので、不機嫌にはならないけど。
……プログレスの能力の話って、残念ながら俺は乗れないんだよな。
「ねぇ、父さんのプログレスってどんな能力なの?」
「私も気になるわ!」
「私も……お父さん、どうなの?」
「あっ、えっと……」
傍観していた舞まで巻き込んで、問われてしまっては答えざるを得ない。
「……あのな、俺は俺個人のプログレスが無いんだ。ほら……虚弱だからな」
「「「あーーー」」」
「まあ、そのな、読み取れないから作れないわけだ。代わりにメカドラがプログレスみたいなものだから、困りはしないけどな」
プログレスはあくまで、休人用のもの。
残念ながら、それそのものが俺の力になることはないんだよな……。
──なんてことを思ったからだ。
フラグの恐ろしさを、俺はログインして改めて認識するのだった。
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