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DIY、お披露目する
マラソンイベント その19
しおりを挟む≪オン・ユア・マークス──セット≫
熟練者用の合図を受けて、最後の走りを行うことに……原付きが。
何でもいいから『走れ』ばいいので、文字通り『走り』を『行う』機械に任せている。
スタート前は不動を条件に使える完全隠蔽で身を隠し、居なくなってから『光速機関』で駆け抜けていく。
同時に『空翔機関』を使い、結界を車輪の下に敷いて空を移動できるようにする。
それだけのことをしても、戦闘職の熟練者部門ではまだまだ届かない。
速度が足りないと無数の『死天』謹製アイテムを費やしても、順位はまだ八割を切ったぐらいにしかならなかった。
「全員、速すぎだなぁ。これで能力値に制限が入っているって言うんだから、それだけ素晴らしい補正があるってよく分かるよ」
参加条件に能力値の制限が無いからか、だいたい同じくらいになるよう調整されているこの戦闘職の熟練者部門。
だがそれでも、スキルや能力……それに道具による強化はそのままなルール。
中には『プログレス』も含まれており、速度特化はこちらの部門にも参加していた。
「神速で進む奴、異常なショートカットをする奴、そもそも走ってない奴……やれやれ、参加するのはどいつもこいつも異常だな」
《では、旦那様……》
「ああ。さっそくだが、起動してくれ」
《仰せの通りに──『空隙の死殿』を起動。対象を参加者全員に指定》
俺はキーシから空間干渉による攻撃を受けて、それが死因によって死んだ。
死因は『死天』の権能を以って物質化されて、:DIY:の力で加工された。
完成したそれは、空間に干渉することで周囲のものを閉じ込める亜空を生みだす。
さながら迷宮とも呼ぶべきそれは、俺の指定したものすべてを吸収する。
──運営が用意した仕掛けも含め、ありとあらゆるものを呑み込む。
◆ □ ◆ □ ◆
空隙の死殿
家族も取り込まねばならないということもあり、内部はしっかりと整備してある。
青い空に白い雲、魔力も漂わせてあるし、精霊なども微精霊だが生みだしておいた。
さまざまなエネルギーが存在し、脱出以外の能力はだいたい使用可能だ。
今回は『破天』対策も済ませてあるので、外部へ逃げ出すことはできない。
俺はマイクを『SEBAS』に用意してもらい、カンペを確認しておく。
魔道具なので、ただ声を広範囲に広げるだけではなく……空間全体に伝える。
「あーあー、皆さん。私の能力で生みだされた世界へようこそ! 条件付きのものですから、脱出できた暁には即座のゴールができることをお約束いたします!」
至る所でブーイングの声が上がるが、彼らにできることは何もない。
そして何より、彼らは勝手に『能力=プログレス』だと思ってくれていることだろう。
対象に参加者全員を指定できたことで、そこに特化したモノだと思っているはずだ。
それ以上の能力が無いと思い込み……少しは情報を開示してくれる。
「──脱出方法は簡単! 迷宮の中央にある宝珠に、条件を満たして触れること! これ以上のルールはご自身で考えてください! ああ、死んだ場合はスタート地点に戻りますからね。リタイアしないと出れませんよ?」
親切に説明するのも、それが条件であるように知らしめるため。
家族はきっと、そう思わないだろうが……熟練者ともなれば、考えるからな。
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