1,101 / 2,831
DIY、お披露目する
神様談(18)
しおりを挟む■■■──創造神は思う。
自分が選んだ男は、なんだかとんでもない方向へ進んでいるのでは、と。
それ自体は、今までも何も変わらない。
何度も自分たちの想像を覆し、ありえないと考えていた既存の概念を打ち砕いていく。
しかし、今回もまた彼──ツクルはやらかしていた。
既知を未知とする、それを娯楽とする神族なので、創造神はそこに興味を持つ。
そんな■■■に視線を向けるのは、配下である◆◆◆◆。
「また何か、考えておられるのですか?」
「考えてみてよ、◆◆◆◆。10000ものレベルを上げるために、人族が本来どれだけの長い年月を費やすのか。そもそも、あの能力を引き出した者がどれだけいたのかを」
「……それは」
「ああ、ごめん。まだ、君にはその資格が与えられていないんだっけ? ネタバレをすると、いちおういるんだよ」
星より世界を任される【救星者】。
その身は生命体でありながら、外付けの枠により一段階高次元の存在へと昇華される。
その副次結果として、彼らは膨大な寿命ととある権限を持つ者と化す。
時間を費やし“職業系統樹”に経験値を注ぐことで、彼らは力を高めていく。
「けど、ツクル君とは関係ない話だよ。今はまだ……ね。問題は、その速度だよ。これまでも【救星者】の中には、星の力をリソースにして経験値を蓄えていた人はいる。けど、その半分くらいは失敗して死んでいる」
「なぜですか? たしか、【救星者】は守護する星のリソースであれば、問題なく受け付けられるはずでは……」
「外身はね。いきなり強くなって、耐えられると思う? 能力値的にも、精神的にも」
「! ……そういうことですか」
経験値を得ればレベルアップし、能力値が向上することで強くなる。
システムに則った正当な強化法、行うことこそが望まれているとも言えよう。
「ツクル君の世界で例えるなら、トラクターにレースカーのエンジンを積むぐらいの違和感が出るんだよ。というか、ほぼ間違いなく壊れる……ツクル君が異常なだけで、急激に成長させれば当然なんだけどね」
「最下級の職業が主とはいえ、10000ものレベルを上げる。それが条件となる能力、そこにどれだけの価値があるのでしょう」
「それこそ、命も懸けなきゃいけないほど危険なね。枷を外し、職業というシステムに干渉し得る能力。星という存在に与えられた権限を部分的に譲渡されたことで成し得る、相応の対価が必要な力さ」
「それほどのものですか……」
神族は職業やスキルを持たない存在。
ゆえに、その意味を真に理解することはできない。
信じられるのは上司の言のみ。
だが、普段はアレでもこういうときは頼りになるお方だと感じている。
「ツクルさん……」
「……ねぇ、ちょっと。今、アレとか思ってなかった?」
「…………」
「無視!? いや、もっとちゃんと聞いてよね!」
◆◆◆◆は今日もまた、とある世界に向けて祈りを捧げるのだった。
10
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる