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DIY、お披露目する
贋作 後篇
しおりを挟む再び戻って始まりの街。
生産ギルド、そして商人ギルドに所属しているため行商人をやっている俺。
絨毯を広げ、先ほど作り上げた無数のアイテムを並べていく。
お値段の方もそれなりに安く、それでいて原価を考えるとボッタクリな品々を。
「……あとは、ここに行商用の人形を配置して完了っと。それじゃあ、任せたぞ」
『お任せください』
自分でやらずともいい。
始まりの街は初心者用のエリアなので、本当に金儲けをしたい奴らは最前線で揃えたアイテムを売り捌いている。
そこで登場したのが──『作業補助人形』であった。
生産、販売などの単純な作業を、本人に代理として行ってくれる便利品。
これは生産ギルドと商人ギルドも使用を認可し、他者が使おうとすると犯罪になる。
……お気づきだと思うが、『SEBAS』のアイデアで外部に送り込んでいた。
嫌なら使わなければいいのだから、その利便性にぜひとも溺れてもらいたい。
「何より、犯罪の瞬間を自分で目撃するのは嫌だからな……」
人形が販売するのは、贋作品である。
いちおう買い占めて市場からは消したが、見る人が見ればすぐにバレてしまうだろう。
人形を使ってそうした汚れている品を売るのは、休人……いや、この世界の人々の中でも知られた方法になっている。
「【贋造者】の就職条件は、自身で作った贋作品を一定の種類と数分販売する。他にもいろいろあったけど、これが一番の問題だったな。アイプスルにも金銭取引を導入しておけば、やらなくても済んだのかな?」
《はい。物々交換ではなく、正式な取引が成立する必要がございました》
「……まあ、仮に俺だと分かっても、休人の中でブラックリストに挙げられるだけだし。こっちの人たちは、そんなことをしている奴でも生かしておく必要がある」
蘇生薬や万能薬を要求されただけで即時に用意できるのは、世界においてもごく僅か。
その中で、生産ギルドにとって都合よく動くのは俺だけ……多少の法取引が効くのだ。
ちょっとだけ心がブラックになったが、すぐに切り替えて露店の様子を窺う。
少なくとも、まったく売れないということは無さそうだ。
「……遠目だが、ずいぶんと客が集まってるな。逆に集まり過ぎて怖いんだが? 注意事項を書いたのが不味かったかな?」
ちなみにその内容は──贋作です、看破を使用後にご購入くださいというものだ。
……罪悪感に圧し潰され、結局相談したうえで事前に連絡しておいた。
休人はつい最近、【贋作者】や【贋造者】の就職条件をとある筋から手に入れている。
なのでそういうことかと勝手に納得し、看破を使って性能がいいと気づいて……買う。
「誰も不幸にならないだろう? と言うのは卑怯か。ただの自己満足だけど、あれ以上はどうしようもないんだよな?」
《妥協点でした。申し訳ございません、私共の力が及ばず……》
「いや、『SEBAS』の力が及ばないなら俺死んでるから。死に戻り的な意味じゃなくて、詰んでいる的な意味で」
ずっと世話になってきておいて、ここで肯定することなどできるはずもない。
おそらく『SEBAS』が居なければ、虚弱体質で真っ黒なアイプスルに居ただろう。
いちおう:DIY:は使えるので、日々地道に生産活動を行うだけの日々。
それと比べれば……うん、『SEBAS』が居てくれてよかったよ。
──なんて感動をしている内に、いつの間にか【贋造者】の条件を満たすのだった。
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