虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,089 / 2,853
DIY、お披露目する

贋作 後篇

しおりを挟む


 再び戻って始まりの街。
 生産ギルド、そして商人ギルドに所属しているため行商人をやっている俺。

 絨毯を広げ、先ほど作り上げた無数のアイテムを並べていく。
 お値段の方もそれなりに安く、それでいて原価を考えるとボッタクリな品々を。

「……あとは、ここに行商用の人形を配置して完了っと。それじゃあ、任せたぞ」

『お任せください』

 自分でやらずともいい。
 始まりの街は初心者用のエリアなので、本当に金儲けをしたい奴らは最前線で揃えたアイテムを売り捌いている。

 そこで登場したのが──『作業補助人形サポートドール』であった。

 生産、販売などの単純な作業を、本人に代理として行ってくれる便利品。
 これは生産ギルドと商人ギルドも使用を認可し、他者が使おうとすると犯罪になる。

 ……お気づきだと思うが、『SEBAS』のアイデアで外部に送り込んでいた。
 嫌なら使わなければいいのだから、その利便性にぜひとも溺れてもらいたい。

「何より、犯罪の瞬間を自分で目撃するのは嫌だからな……」

 人形が販売するのは、贋作品である。
 いちおう買い占めて市場からは消したが、見る人が見ればすぐにバレてしまうだろう。

 人形を使ってそうした汚れている品を売るのは、休人……いや、この世界の人々の中でも知られた方法になっている。

「【贋造者】の就職条件は、自身で作った贋作品を一定の種類と数分販売する。他にもいろいろあったけど、これが一番の問題だったな。アイプスルにも金銭取引を導入しておけば、やらなくても済んだのかな?」

《はい。物々交換ではなく、正式な取引が成立する必要がございました》

「……まあ、仮に俺だと分かっても、休人の中でブラックリストに挙げられるだけだし。こっちの人たちは、そんなことをしている奴でも生かしておく必要がある」

 蘇生薬や万能薬を要求されただけで即時に用意できるのは、世界においてもごく僅か。
 その中で、生産ギルドにとって都合よく動くのは俺だけ……多少の法取引が効くのだ。

 ちょっとだけ心がブラックになったが、すぐに切り替えて露店の様子を窺う。
 少なくとも、まったく売れないということは無さそうだ。

「……遠目だが、ずいぶんと客が集まってるな。逆に集まり過ぎて怖いんだが? 注意事項を書いたのが不味かったかな?」

 ちなみにその内容は──贋作です、看破を使用後にご購入くださいというものだ。
 ……罪悪感に圧し潰され、結局相談したうえで事前に連絡しておいた。

 休人はつい最近、【贋作者】や【贋造者】の就職条件をとある筋から手に入れている。
 なのでそういうことかと勝手に納得し、看破を使って性能がいいと気づいて……買う。

「誰も不幸にならないだろう? と言うのは卑怯か。ただの自己満足だけど、あれ以上はどうしようもないんだよな?」

《妥協点でした。申し訳ございません、私共の力が及ばず……》

「いや、『SEBAS』の力が及ばないなら俺死んでるから。死に戻り的な意味じゃなくて、詰んでいる的な意味で」

 ずっと世話になってきておいて、ここで肯定することなどできるはずもない。
 おそらく『SEBAS』が居なければ、虚弱体質で真っ黒なアイプスルに居ただろう。

 いちおう:DIY:は使えるので、日々地道に生産活動を行うだけの日々。
 それと比べれば……うん、『SEBAS』が居てくれてよかったよ。

 ──なんて感動をしている内に、いつの間にか【贋造者】の条件を満たすのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...