上 下
1,087 / 2,733
DIY、お披露目する

贋作 前篇

しおりを挟む


「いっそのこと、職業の能力でスキルを複製できないか?」

《可能です》

「だよな、やっぱり無理……え゛っ!? あるのかよ!」

《大幅な劣化を代償に、他者の使用したスキルを模倣する。そういった能力を有した職業が存在しております……ただし、旦那様が就くことは現在不可能です》

 そこまで言われれば、どういう意味なのかは俺でも察せられる。
 あるけど就けない、それはつまり何かしらの制限があるものということで──

「人数制限付きの……王とか神とかが付いているヤツなのか。ちなみに、その系統は?」

《【贋作者】。初期はアイテムのみですが、王の領域に至ることで、他者の能力をも複製できるようになります》

「いかにもやってそうな職業名だしな……これには【見習い】があるのか?」

《いいえ。そして、【贋作者】は作ることを本質としていないため、旦那様の初期状態の“職業系統樹”にも表示されませんでした》

 俺もそれに就けたのならば、能力とか関係なく就こうと思っただろうし。
 まあ、初期から就けた職業は全部、すでに上級までカンストしているわけだが。

「……【見習い】が無いってなると、これも難しいのか。たまに複合系の職業が増えていたけど、【贋作者】は無いもんな」

《いえ、旦那様でしたら比較的簡単に就職条件を満たせることでしょう。ただし、いくつか問題点がございまして……》

「問題点?」

 説明されたその条件とやらは、たしかにややこしくなりそうなものだった。
 しかし、【贋作者】ならば当然とも呼べる内容でもある。

「それ、どんな方法でもいいのか?」

《下位職はたしかに、それでも構いません。ですが上位職、そして【王】に就くのであれば確実に必要となります》

「……とりあえず下位の分だけ試してみて、あんまり問題が無くなったら続けてみるか」

《畏まりました。旦那様のご指示通りに》

 やることが決まったので、行動開始だ。
 とりあえず……街に行ってみようかな?

  ◆   □   ◆   □   ◆

 大通りの一区画を使って築かれたそこは、休人たちが露店を開いているスポットだ。
 お金の無い初心者、そして初心者をカモる商人や生産者たちが集まっていた。

 ここにある商品は、曰く付きだったり知られていない製作者の品だったりする。
 だがその分安く、何より後腐れなく使うことができるのだ。

「……とりあえず、これぐらいでいいか?」

《はい。十種類の確保ができました》

「あんまり気が進まないというか、尋常ではない罪悪感があるよな」

 現実でも、たしかにそういうことをする奴はいるだろう。
 すでに他者が成功しているからこそ、自分でも同じだけの利益があると考え実行する。

 それで、どれだけの被害が出たのだろう。
 ……そう考えてしまう前に、やることを済ませなければ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

処理中です...