1,062 / 2,733
DIY、発明する
古代交渉 その11
しおりを挟む次に向かうのは南東の区画。
……西に居たのに南西ではなく、わざわざこちらへ来たのには理由がある。
「それはまた、別の時に。今回の区画は、湿地帯……湖とは言わずとも、それなりに豊富な水源が用意されています」
水の味は……うん、腹を下しそうだ。
古代人は耐性があるかもしれないが、現代人な俺では生水で速攻ダウン間違いなし。
当然、『SEBAS』に訊けばすぐ分かるだろうが、水を飲みたいなら魔道具を使えばいいのでわざわざ訊く必要がないだろう。
「ちなみにここ、だいぶデカい虫なんかも出ています……例のアレもいるらしいが、視界に入る前に処理してもらっています」
《お任せください、旦那様。この世界は旦那様のもの。現実では不可能に近くとも、世界そのものを操れるここであれば、原初から葬り去ることが可能です》
「ああ、期待している……夢でもいい、アレの居ない世界を創ろうじゃないか」
すでに再出現しないように設定してあるので、自然交配以外で奴らは増えない。
それこそが一番厄介なのだが……逆に言えば、殺してしまえば二度と出現しないのだ。
嗚呼、これを全世界の人々に教えたい。
移民も増えるかもしれない──この世界にはアレが居ない、それだけで寒冷地帯に住んでいない人々の大半が釣れるはずだ。
「……と、ここまで虫の話をしているが、それはまた別の機会に。具体的には、南西区画の時ぐらいに。今はそうではなく、別の恐竜さんと接触です」
水源は場所ごとに沼地や湿原など、多様な環境として配置されている。
中でも広い湾処と呼ばれる場所に、この区域を統べるボスが君臨していた。
アヒルを巨大化させ、足を伸ばしたようなフォルムをした不思議な恐竜。
こいつもまた、ヘノプスの知らない新たな知性を宿す恐竜型の魔物だ。
「失礼、ハルシュカラプトルさんで合っているでしょうか?」
『そーだけど……誰?』
「私はツクル、人族に連なる者です。今回は人族と皆さま方との間により良い関係を構築するための場を設けたく、交渉をしたく参りました」
『ふーん……』
水の上でぷかぷかと漂いながら、ハルシュカラプトルは俺の話を聞く。
まあ、前回のサウロポセイドンに比べればマシな対応だろう。
「──ということでして。少し前にあった魔物の反乱によって、勢力図にも大きな影響が出ております。すでに一か所を除き、すべての皆さまの参加を確認しております……いかがなされますか?」
『いーよ。ただー、おいしー物を出してくれなきゃやーだからねー』
「ええ、畏まりました。では、どういった物が好みなのかをお聞きしておきましょう。人族と皆さまとでは食生活が違いますので、予め知っておきたいのです」
『うーん、そーだねー……』
恐竜が食べる物を恐竜に聞く。
マニアが聞けば垂涎物かもしれない……単純に、揉めたら厄介になるからだけど。
そんなこんなで、残るはあと一区画。
もっとも行きたくない場所──南西の荒野に行くしかないのか。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる