虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,032 / 2,831
DIY、発明する

万戯華境 その04

しおりを挟む


 結界を光学迷彩で隠してから、そこに引き籠もって情報収集を始める。
 サングラスを掛けた俺の視界には、広大な世界が広がっていた。

「普通の世界みたいに見えるな……所々がこれまでで一番ファンタジーっぽいけど」

《あらゆる場所から現象を取り込んでいるからこそ、その歪さに整合性を感じているのかもしれません》

「かもしれないな。空飛ぶ島、球体の海、巡回する嵐……何より、巨大な国だし」

 ドローンが映し出す亜空間は、これまで冒険してきた中でもっとも『らしい』ファンタジー感に満ち溢れている。

 物理法則を出してしまえば、決して説明しきれない異なる理。
 子供の空想をそのまま現実にしたような、ありえないと一蹴されそうな光景だ。

「……だからこそだな。『千変』と『万化』は、自分たちの思うままにこの世界を……箱庭を作り出した。そこには、子供の夢想が込められていてもおかしくはない」

《亜空間の主は双子であり、彼らにはこの世界を思うがままに書き換えられる権限が与えられています。そして、多少の制限は権能を用いることで破壊可能です》

「命のストックを捧げ、理すらも変える権能か……というか、『千変万化』。つまり元の権能がどんなものか知りたくなってきたよ」

 調査をして分かったことだが、双子の権能は親譲りの権能が二つに分かれたものだ。
 そして、生まれた時点で権能が分裂して移譲された……うん、謎が多いな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──ふぅ、空気は普通だな」

 この亜空間の法則を『SEBAS』が解析してしまえば、自由に活動できる。
 その身を完全に隠したうえで、人族が住まおう巨大な島に移動した。

 広がる街並み、中央に置かれた大きな城。
 そして、亜空間の内部だというのにさまざまな人種の者たちが生活をしている。

「他の場所に人族の反応は無いみたいだし、ここの調査をするだけでいいよな」

《はい。ですが、城の内部に強大な魔力反応はございません。おそらく、亜空間内で観測された迷宮ダンジョンに向かっているのかと》

「亜空間の中に亜空間って……」

 一種の別世界なため、死亡レーダーは反応してくれない。
 まあ、レーダーそのものはしっかりと機能してガンガン警鐘を鳴らしているけど。

「まずはここの住民に聞き込み調査だな。さすがに脱出のお手伝いはできないだろうが、原因ぐらいは聞けるだろう。人形の用意をしてくれるか?」

《畏まりました》

 どこからともなく精巧な人形たちが配置され、光の屈折や術式の効果で違和感なく人族として活動できる。

 さて、双子は何をやらかしたんだか。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...