1,011 / 2,831
DIY、家族と共に
家族冒険 その10
しおりを挟むそして数時間後、ようやく本題──冒険を始めることになった俺たち家族。
向かうのは再び巨大な扉、そこを潜ることで冒険の舞台へ移動する。
そこは青い空が広がる草原。
スライムやドッグなど、比較的弱い魔物たちが生息している地だった。
「──こちらが『冒険の間』、一階層ごとに異なるフィールドとなる迷宮でございます」
案内係のセバヌス──『SEBAS』が動かす人形──によると、魔物のレベルは階層に比例して強くなっていくらしい。
この階層であれば出てくる魔物はすべてレベル1だし、次の階層なら必ず2。
どんどん潜っていっても+1されるだけなので、帰るタイミングも決めやすい。
……裏を返せば、下だとどんな魔物が相手でも油断できないってことだけどな。
「それじゃあ、ポジションを決めようか。まずショウは前衛」
「任せて!」
「俺とマイが中衛で、ルリが後衛だ。マイ、従魔は初めの内は用意しないでくれ」
「うん、分かった」
古き良きゲームだと、六人じゃなく四人でパーティーを組んでいる。
EHOはデメリットを気にしなければ何人でもOKだが、やっぱり最初は家族でな。
……それに、ただでさえ四人中三人が尋常ではない力を有しているのだ。
聖獣とか神獣とかそんなチート級の存在を呼ばれては、もう俺の価値が無くなる。
今は家族で、ということだが……真面目にパーティーを作るというのであれば、雑魚を入れるよりは優秀な従魔を入れる方が合理的では無いだろうか?
◆ □ ◆ □ ◆
そうして始まった冒険だが、当然最初の内はショウ独りですべて解決するぐらいあっさりとしたものである。
参加者の平均レベルは428……これだとデカすぎるな、主に俺の999が。
三人の平均は237、この迷宮は千階層まで造ってくれているらしいが、それでもかなりの間は無双回となってしまう。
「……ちょっと暇かも」
律儀にすべて剣で倒しているものの、それらすべてが一撃で終わることに作業感を覚えつつあるショウ。
すでに階層は30階層、それでもなおショウの無双を止めるものは現れない。
「千階層もあるし、本当はやりたくなかったが……仕方がない、家族で挑むときだけの特別ルールを用意しよう」
「「「特別ルール?」」」
「ああ、相手が弱すぎるなら……こっちも弱くなればいい──セバヌス」
パチンと指を鳴らすと、俺の要求を即座に汲み取ったセバヌスによって迷宮のルールが一部書き換えられる。
すると、家族は急に立ち眩みが起きたかのようにガクッと体を揺らす。
「今のでなんとなく分かったと思うが、能力値の方に制限が掛かった。階層分までしか、能力値を使うことはできない」
「うおっ、さっきより躱しづらくなった!」
「AGIも落ちたからな。さて、みんなで支援するぞ! ……あっ、支援にも制限が掛かるから注意しろよ」
なんて縛りプレイを設けたりしながら、俺たちはアイプスル世界迷宮の最深部を目指していく……うん、名詞が長いな。
10
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる