虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
1,006 / 2,820
DIY、家族と共に

家族冒険 その05

しおりを挟む


「うぉおお、広ぇええええ!!」

 ショウが叫んだ通り、巨大な扉を潜った先はそれと同じくらい広い空間だった。
 そして、そこには一つだけ目立つ物が設置されており……。

「モノリスって言うのかしら、これ」

「ええ、さすがは奥様。それこそが、先ほどご説明いたしましたシステムを運用するための『秘石モノリス』でございます」

「父さん!」

「ああ、前に似たようなことをやっていたから問題ない。とりあえず、戦いたい相手を思い浮かべて触ってみようか」

 嬉々として秘石に触れるショウ。
 すると、魔法陣などに用いられる特殊言語がそこに浮かび上がり……ホログラムとしていくつもの名が書き連ねられていく。

「……ショウ、なんだか凄そうな名前ばかり浮かんでいるんだが? えっと、この一番上の……『剣帝グラム・アスリバー』ってどこの誰なんだ?」

「こっちの世界で剣を教えてくれた師匠。普通の武器だと、まだ勝てないんだぜ」

「剣技が凄いってことか……職業か二つ名かは分からないけど、いずれ会ってみたいな。自力で会ってみたいけど……まあ、無理そうだから紹介状を頼む」

「了解! あっ、でも会ったら誰にでも攻撃しているから気を付けた方がいいかも」

 ……えっ、それって殺人未遂じゃ?
 どうやら止めるところまで完璧なお方なようで、ショウが見た限り怪我をしたようなヤツは一人も出なかったようだ。

「姉さん、母さん……」

「しょうがないわね」
「ふふっ、一回だけよ」

「やった! ねぇ、父さんもいいでしょ?」

「ああ、いいぞ。いいけど……」

 俺、後回しなんだな。
 分かっているさ、うちはどちらかというとこういう選択が有るときは女性の意見が優先される。

 どうしても譲れないものがあるならまだしも、こういうときは男は譲るものだろう。
 ……まあ、たとえ否定しても大抵のことはルリが納得しないと覆るんだけどな。

「けど、どんな物にするんだ? レイドボスとかを出されても困るぞ」

「……これ、ダメかな?」

「──『切斬剣人ソード・ザ・リッパ―』。ショウ、これまた凄い相手だな」

「あのときは……偶然に偶然が重なって、どうにか勝てたんだ。けど、今回は自分の……家族の力で勝ちたい!」

 自分の力、ではまだ届かないと判断したのかもしれない。
 だけど、かつてよりも成長していると実感が持ちたかったのだろう。

 たとえ独りでもまだダメなら、信頼できる者と共に届かせるために。
 過去との決別、それがショウのためになるのなら……俺たちは応える。

 ──それじゃあ、再戦スタート。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...