933 / 2,733
DIY、真・就職活動
新たな神像
しおりを挟む神族の血とやらに、心当たりが無いわけでもなかった。
そんなこんなで訪れたのは、だいぶ前から寄付を続けていた孤児院。
「あっ、おっちゃん! 久しぶり!」
「……ええ、お久しぶりです。最近はどうですか、楽しいですか?」
「ああ、おっちゃんのお蔭でここもずいぶんと綺麗になったからな! 俺たちも今は、新米冒険者として頑張ってるぜ!」
「そうでしたか。では、今回はお金だけでなく勇敢な冒険者さんたちに贈り物をすることにしましょう」
装備なんかを渡して、不相応な冒険をした結果死亡……なんてことになるのはゴメンこうむるので、新作の自動ポーションである。
持ち主の生命反応が著しく低下したとき、勝手に瓶が割れて体に回復ポーションを染み渡らせてくれるという一品だ。
背に腹は代えられない、そんな緊急時にしか使いどころはないが……肌身離さず持っておくべき応急品として絶賛発売中!
「──というわけです。君たちは、できるだけこれを使わない場所で冒険してもらいたいですけど……できませんよね?」
「当たり前だろ、おっちゃん。むしろ、おっちゃんが儲けられるように俺たちでしっかり使うからさ!」
「嬉しいですが、あまり喜べることではありません──そうですよね、神父様?」
「げっ!」
少年の背後には、ゴゴゴゴッとオーラを纏う神父様がスタンバイ!
しばらく長くなりそうなので、自然な形で俺はこの場から離れる。
「お、おっちゃんズルいぞ!」
「神父様、ここはお願いします……私は神像の方に用がありまして」
「分かっております。できれば、綺麗にしてあげてほしいのですが……」
「はい、お任せください」
恨めしい目をする少年に、同情するような眼差しを向けてからこの場を去る。
遠くで誰かに文句を付ける声が聞こえたわけだが……俺、まだ二十代だから関係ない。
◆ □ ◆ □ ◆
「──よし、こんなものか」
自分で彫ったショタな感じの神像。
その細やかな部分まで、:DIY:を用いて綺麗に磨いていく。
いつもお世話になっている(と思われる)神様なので、そういう感謝の意を籠めて必死に掃除して──ピカピカにする。
「ありがとうございます、創造神様」
≪祝福(■■■の注目)は(創造神の注目)に変化しました
祝福(◆◆◆◆の加護)は(◆◆◆◆の祝福)に変化しました≫
「……ん?」
突如入った連絡に、思わず首を傾げた。
前者はまあなんとなく分かるが……あの女神様、もしかして──
「分かりました、お任せください──もう一度発動、:DIY:!」
《:DIY:が起動されました
使用者『ツクル』の指定能力値──概念崩壊……成功しました
アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》
起動を確認後、創造神様の神像を彫った物と同じ材質の石を創造する。
これで準備は万端、あの思い出の姿……は思いだせないので、可能な限り頑張ろう。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる