虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
928 / 2,815
DIY、真・就職活動

逆侵攻 その05

しおりを挟む


 ここからはひたすら、俺と『騎士王』が無双しているだけの時間が続く。

 聖なる装備に身を包む『騎士王』は、あらゆる武具を振るって侵略者を屠る。
 魔術で浮いたのであろう多種多様な武具、その一つひとつを達人以上に扱っていく。

 綺麗な太刀筋、というか動き一つを取っても洗練されているのだ。
 それと同時に魔術が彼女の望む場所から放たれ、侵略者の殲滅速度を加速させている。

「……凄いな、本当に。たとえ真似ようとしてもできない、それが『騎士王』の本質か」

 まあ、今やっているのも権能を使っているだけで本気ではないみたいだが。
 彼女は『騎士王』だが、職業的にもそれなりに強い職業のはずだし。

 ──種族、職業、称号の三つがマッチしていた『白氷』と同じようなものだろう。

 あらゆるスキルに適性を持つ【普人】、スキルすべてが使えるうえでその成長速度に凄まじい補正をもたらす『騎士王』。

 そして、【円卓騎士】たちの長の職業。
 これが普通なわけないし、そうだったとしても今目の前で繰り広げられる光景は覆るわけじゃない。

 そうなるのは、あくまで俺の持論だけだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 荒廃した世界に建築物など、人工物などは存在しない。
 ひたすら地平線しか見えないからこそ、そこには違和感が満載だった。

「在ったぞ、『生者』よ」

「……なんだよ、アレ」

「調査だけのつもりであったが、よもや中継点の一つを見つけられるとはな」

「え゛っ? あれで……中継点!?」

 突如現れた巨大な山。
 黒く染まったそれを視た『騎士王』は、それを中継点──侵略者の親玉と繋がる存在だと告げた。

「そもそも侵略者に群れというシステムが形成されているかは分からないが、少なくとも限りなく侵略者を生みだす母体は存在するのだろう。そして、母体から生まれた侵略者を地上に放つ端末が……あれのようだ」

「なんで、そんなこと分かるんだ?」

「…………勘だ」

 バレバレの嘘だ。
 しかしそれを追及することもできず、今はその中継点とやらに意識を向ける。

「これまでみたいに聖槍で屠れるか?」

「無理だろうな。あれは母体と繋がっているのだ、相応の能力を与えられている。破壊されようと、すぐに復活して侵略者を生みだすだろう」

「じゃあ、どうしようもないのか?」

「いいや、そうでもない」

 ニヤリと笑みを浮かべる『騎士王』。
 その顔を見ただけで分かった、絶対にロクなことを言わないと。

「──出番だぞ、『生者』。これまでに見たモノが報酬だ、その分は働いてもらおうか」

 そんなことだろうと思ったよ!

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...