虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
915 / 2,853
DIY、紡がれる関係性

迷宮イベント その19

しおりを挟む


 結局、俺たちはすぐに三層へ向かった。
 ……正確には、そうせざるを得なかった理由があるわけだが。

「まさか、殲滅したら疎まれるとはな」

「なかなか無い経験であった。『騎士王』である私にあのような視線を向けるとは……間違いない、彼らはきっと出世する!」

「たぶん、お前の正体が分かったら全力で土下座すると思うからな。知らないからこそ、できることもあるわけだし」

 そう、魔物を狩りすぎたのだ。
 迷宮は共有のスペースのため、狩ればその分魔物は減っていく。

 まず、俺という弱者を狙って大量の魔物が集まり……それを『騎士王』が屠る。
 図らずも釣りのような狩りとなった結果、周りから疎まれることになったわけだ。

 そして、三層になる。
 ここの魔物は強く、そして知恵があるためすぐには俺たちの下へ現れない。

 なのでこうして会話ができる程度には、まだ余裕が保てている……もちろん、いつまで持つか分からないけれど。

「しかし、『生者』の体質はイカサマであろうな。弱者を装い、強者たちを屠る牙を隠し続けるとは……恐ろしいものだ」

「そういうもんでもないからな。装うつもりも、隠している気もない。それよりもほら、さっさと倒すぞ」

「うむ、分かっている」

 これまでもそれなりにデカい魔物を倒してきたが、三層は異次元のレベルを誇るとウワサがあり……そしてそれは正しかった。

 百本の腕を生やした巨人、広大な大樹、二層で見たモノよりも壮大なドラゴン……神話とかに出てきそうなレベルの魔物たち。

 おそらく、突破させる気はないだろうというレベルである。

「そりゃあ倒せないわけだよな。『騎士王』はあのサイズの魔物、見たことあるか?」

「無いな。そもそもあの大きさは、神々により自然発生ではありえぬ埒外の存在として用意されたのだろう」

「……この祭り限定の魔物ってことか?」

「仮定ではあるがな。すべての民がここに集い、挑むことを望まれたのだろう」

 たしかにそれだけ力を合わせれば、そうなるのかもしれないな。

 だが、ここには二人しかいない……本来であれば、攻略などできるはずがない。
 しかしながら、俺たちは『超越者』であり片方は最強の『騎士王』だ。

「行けるか、『騎士王』」

「ああ、問題ない。むしろ、どれだけやりあえるかそれが不安だ。『生者』はどうだ?」

「……嗚呼、逝けるだろうな」

「違和感はあるが、それこそが『生者』であろうな。では行くぞ、誰も見たことのない最深部へ!」

 なんてノリに付いていけたのは、これまで見たことのない超弩級の魔物たちと出会い、それを踏破後に呼びだせることを期待していたからだろう。

 実際、だいぶ興奮していた。
 隣に『騎士王』が居る時点で、ほぼ不可能なことなど存在しないからだ。

「まずはあの巨人だ!」

「こうなったら、どうとでもなれぇえ!」

 ──そして、いろいろと後悔する。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

処理中です...