上 下
893 / 2,795
DIY、紡がれる関係性

抑止力 前篇

しおりを挟む


「甘ぁい! なにこれ、すっごく美味い!」

「なかなかやるではないか、『生者』よ」

「……虫歯にならないか気にしろよ。というか、この世界に虫歯ってあるのか?」

「あるにはあるが、高レベルの者には無縁だな。なにせ、耐性のレベルが桁違いだ」

 ずっと前にタクマが食べ過ぎると太るだのと言っていたので、食事が身体に影響を及ぼすことは知っていた。

 いちおうこの世界では、魔法を使うだけでもエネルギーを消費するのでほとんどの者がスリムな体型だ。

 なのに太るって凄いな、みたいなことをアイツは言っていたな。
 ずっと前に作っていた、痩せ薬なんかはどうやら不要だと当時は感じたものだ。

「それは良いのか悪いのか……まあ、判断が付かないがそれはいいや。『騎士王』、お前は『宣教師』ってどんなヤツだと思う?」

「むっ、『宣教師』に会ったのか……私は一度として『生者』の来ない集会でしか知らないが、そのときの様子から考察するぐらいしかできないぞ?」

「まあ、今回有ったことを土産話にしてやるからそこから情報を集めてくれ」

 ついでに『白氷』にも、五州で起きた出来事について話してみる。
 あとは『SEBAS』の見解を交え、感じたおかしな点もセットで話す。

「──とまあ、そんなところだ。割と自由に動いて人助けをしているみたいだけど、別のヤツの意思も絡んでいた……どう思う?」

「『生者』、お前はもう九割がた分かっていることを今さら問うのか?」

「確信が欲しい、それだけだ。たとえ相手が不干渉を選んだとしても……知っている、それだけで注意する対象だからな」

 なぜそういった結論に至るのかはさっぱりだが、『SEBAS』は『超越者』に対抗する集団が居ると主張していた。

 正義でも悪でも無い、だが力を持っているのが『超越者』だ。
 俺はこれまで、そこまで悪人っぽい奴と接触したことはないが……心当たりはある。

 最初のイベントで出会った邪精霊。
 邪精霊は【勇者】によって封印され、解放の条件が『超越者』の死亡とされていた。

 本人ならぬ本精霊に事情は訊いてあり、当時かなり強い『超越者』を見たことがあったそうだ。

 そういう奴らが問題を起こし、それに誰も『超越者』が関与しない場合でも考えているのだろうな。

「……まあいい。『生者』の想像通り、私たち『超越者』の中には永い時を生きる者たちが居る。そういった者たちに危機感を抱き、作られた組織があった」

「過去形かよ」

「当初の在り方と今は違うのだ。詳細は省くが、現在では新たに生まれた『超越者』のうち危険な者を調べ上げることを目的としているらしい。殺すわけでもない、ゆえにこちらにも協力者がいる」

「それが『宣教師』なわけか」

 どこの世界だって、そういう抑止力的な存在があるわけか。
 世知辛いな……なんか、そういうのって。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

チートなガチャ運でVRMMO無双する!?~没入型MMO「ラスト・オンライン」

なかの
ファンタジー
「いきなり神の剣が出たんですけど」 僕はチートなガチャ運でVRMMO無双する!? 330万PV(web累計)突破! 超大手ゲームメーカーの超美麗グラフィックな大型RPGの最新作「ラスト・オンライン」 このゲームは、新技術を使った没入型MMO、いわゆるVRMMOだった。 僕は、バイト代をなんとか稼いで、ログインした先でチートのようなガチャ運で無双する!! 著/イラスト なかの

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...