891 / 2,752
DIY、紡がれる関係性
白氷 後篇
しおりを挟む「──遊びに来たんだよ! だってほら、面白そうだったし!」
一言で理由を纏められてしまう。
わざわざ高級な蜜を使わずとも、粗悪品でも良かった気がした。
「暇潰しにお城を作ってたら、なんか凄く吹雪いてくるから吹き払って―。そしたら急に変な天使が来たんだよねー」
「それがあの死徒様でしたか」
「そうそう、たぶんねー。いろいろとやってみたんだけどー強いね。で、少しずつ体が動かなくなったと思ったら……急に目の前にオジサンの顔が現れてビックリ! という感じだったかな?」
「…………そ、そうですか」
一瞬、『死天』のアイテムをぶちまけてやろうかとも思ったが、妖精と人ではもともと寿命が違うと自分を誤魔化し、息を整える。
それに、見た目に関しても否定はできないわけだし……全然年を取らないうちの妻は、何か特殊な加護でも授かっているのだろう。
「まあ、御無事で何よりです。こちらでも把握している情報をお伝えします」
「……ん?」
「こちらに『白氷』様が居ると判明した時、ある程度情報を集めさせていただきました。休人……いえ、星渡りの民のことをご存じでしょうか?」
「えっとー、最近現れた人たち?」
俺たちがログインするようになったのは、彼女が封印されるようにも後の出来事だ。
覚えているかどうかだけは不安だったが、どうやら覚えていたらしい。
「この地は彼らのために、用意された試練の舞台。そのため『白氷』様が理から外れ、この地に降り立ったことは想定外。ゆえにこの地へ死徒様を向かわせたのです」
「……ふーん、ずいぶんとはた迷惑な人たちなんだね」
「私もその一員ではありますが、特に望んでいたわけではありませんよ。たとえるならそう、神の悪戯とでも言っておきましょう」
「そりゃあ、死徒を用意できるのは神だけだと思うけど……」
死徒、そして使徒だから当然だ。
運営が使徒を動かせる辺りから、いちおう神扱いをしていいと思う。
「──とまあ、そういった事情でした。何か思うところはございますか?」
「ううん、別になんにも。悪戯だって、バレた方が悪いんだもん、だから、今回は私の方が負けただけ……けど、次はそれ以上にいい作戦を考えるもん」
「……そう、ですか。では、私は応援することにしましょう。神をも出し抜くという、貴女様の悪戯とやらを」
本当に気になるところだ。
あの『騎士王』辺りは逸脱しているが、それ以外の『超越者』がどこまでできるのか。
知っておいた方がいいだろう、影響が家族に及ぶ前に。
10
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる