虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
829 / 2,853
DIY、就職活動へ

金属活用法

しおりを挟む


 報酬として受け取った『流体液体金属』、その難点は一定の量が無ければまったく使い物にならない点だ。

 そのうえ購入する場合は少量でも多額の金銭が必要で、入荷数もほんの僅か……性能はいいが使えない物の類だな。

「だがまあ、俺にはこれがある。さっそく増やしていこうか」

 魔物の素材にもよく使う、複製の魔道具。
 必要な量の魔力を支払うことで、あらゆるアイテムを完全な形でコピーできる。

 二つの魔法陣の内、出力側に一度液体流動金属を載せて情報を読み込ませておく。

 そして、もう片方の魔法陣の上に魔石を載せて起動すると……魔力が流れて術式を発動して──アイテムが複製されるのだ。

 ただ、今回は必要な魔力量が多いな……複製ができないわけじゃないので、多少の出費は気にせず魔石を使って液体流動金属を増やしていく。

「……とりあえず、一t分ぐらい増やすことができたな。これで何を作ろうか、何かいいものはないか?」

《それでしたら、やはりカエンの駆動部分の強化に行うべきでしょう》

「それなら、『SEBAS』の分も作らないとな……ちなみにだが、カエン一人分でどれくらい使うんだ?」

《一度錬金で加工する必要がありますので、おそらく……五百リットルほど必要になるかと。インゴット化で一リットル、人造魔物化の場合は五百tです》

 五百tって……異常だな。
 これは素体のすべてを液体流動金属にした場合であり、普通は混ぜ込む程度で効果を発揮するらしい。

「まあ、やれるならやってみようか……仮説だけで誰もやっていなかったことを試すのはやっぱり、面白そうだしな」

《では、液体流動金属を製造ラインに加えておきましょう。五百tの製造が完成したのちに報告致します》

「頼んだぞ……さて、カエンの強化をしないとな。どうやってやるんだ?」

《通常のゴーレムの場合、旦那様が錬金術によって合成する必要があります……ですが、カエンの場合は体内へ取り込むことで自己進化を行います》

 なんと素晴らしいゴーレムだったのか。
 作製者である俺自身も知らなかったことだが……もしかして、とっくに何度か経験しているのかもな。

「って、五百リットルもいったいどうやって取り込むんだよ」

《手をかざすなど、皮膚に触れるだけで構いません。飲む、食べるなどでも可能ですが効率に変化はございません》

 まあ、方法は分からないが便利な体だ。
 五百リットルも保存できるという点も、なかなかに気になる。

「まあ、液体流動金属に関してはまた今度だな。さて、今日は何をしようか?」

 決まっていない予定、だけどそれはいいことに違いない。
 捕らわれない自由な日々……休める憩いの時間ってのは、代えがたい日々だからな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

処理中です...